鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #13

「デザインは好き嫌いじゃない」 企業でデザインを使いこなす人を増やす、WEデザインスクール 稲葉裕美氏の挑戦

前回の記事:
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 「モダンエルダー」という言葉を知っていますか? 若者に耳を傾けて新しいことを受け入れながら、エルダーとしての力も発揮する「職場の賢者」のことを指します。日本を代表するマーケターであり、クリエイティブディレクターでもある鹿毛康司氏がモダンエルダーを目指して、さまざまな若手にインタビューしていく企画です。

 鹿毛氏は「過去うまくいったことも、今ではうまくいかないことがあります。自分としては、思考能力はまだまだ大丈夫だと思っている一方で、時代との何らかのズレを修正し続けなければいけないと、恐怖を感じているんですよ」と語ります。本連載では「若者に教えてもらう」をテーマに、時代とビジネスの勘どころを探っていきます。

 第13回は、WEデザインスクール主宰、OFFICE HALO 代表取締役の稲葉裕美氏が登場。稲葉氏は武蔵野美術大学でアート・デザインマネジメントなどを学び、現在はビジネスパーソン向けに「デザイン判断力」を教える学校を運営しています。「デザイナーやアーティストと社会をつなぐ役割」を担う人材として活動する稲葉氏は「デザインは“好き嫌い”の話でも、“センス”の話でもない」と断言します。

 前編では、デザインとアートの本質的な違いから、多くの企業が抱えるデザインの問題、そしてデザイナー選定がプロジェクト成功の8割を決める理由まで、実践的な知見を語っていただきました。
 

クリエイティブ=アートという大きな誤解


鹿毛 まずは自己紹介をお願いします。

稲葉 稲葉裕美と申します。武蔵野美術大学と共同で開校した、ビジネスパーソンを対象に「デザインの判断力」を学ぶ学校「WEデザインスクール」を主宰しています。

高校まではいわゆる進学校に通っており、法学部への進学を考えていました。兄や姉も同じような進路を歩んでいましたし、経営者である親の影響もあって、自然と法学部に進むのが良いのではないかと思っていたんです。
 
デザイン教育家
WEデザインスクール/WEアートスクール主宰
株式会社OFFICE HALO代表取締役
稲葉 裕美氏

1984年愛媛県松山市生まれ。武蔵野美術大学造形学部卒業。
経営者の家で育ち、元々法学部志望だったが、本当に好きなことをして生きたいという思いから進路を転換し、武蔵野美術大学造形学部に入学。創造性教育、アート教育、美術史、アート・デザインマネジメント、文化政策などを学ぶ。
2014年に「クリエイティブ教育をイノベーションする」というビジョンのもと、美大時代の仲間と共にOFFICE HALOを設立。2016年に武蔵野美術大学デザイン・ラウンジと共同で、日本初のデザイン経営の学校「WEデザインスクール」を開校。デザインのアカデミックな教育法に独自の解釈を加え、クリエイティブが苦手なビジネスパーソンのために「デザインの言語化」を中心とした新しい教育メソッドを生み出す。社会人の感性を刺激する、これまでにない分かりやすさが好評を得て、さまざまなメディアや教育機関から注目を集める。2024年より美大式のアート思考の学校「WEアートスクール」を開校。著書に『美大式 ビジネスパーソンのデザイン入門』(翔泳社)。
これまで企業、行政、大学、大学院などで多数プログラムを開催し、1万人を超える受講者を輩出している。主な講師・活動実績として 武蔵野美術大学、多摩美術大学、グロービス経営大学院、北海道大学、神戸大学、国立情報学研究所、千葉県いすみ市など。

鹿毛 ご両親が経営者とのことですが、どのような事業をされているのですか。

稲葉 エネルギー関連事業です。祖父母が創業した会社で、父が二代目、現在は兄が三代目として事業を継いでいます。

鹿毛 経営者の家系には、不思議とそうした資質を持つ人が育つものですよね。そうした環境下で、武蔵野美術大学に進学されたわけですが、美大によく合格できましたね。

稲葉 入試では絵は描かず、論文で入学したんです。今でも絵は得意ではありません。

大学では、自ら手を動かしてものをつくる技術だけではなく、デザインマネジメントやアートマネジメント、文化政策、クリエイティブ教育といった分野を学びました。デザインやクリエイティブの文脈を理解し、それらを活用して様々な価値を生み出せる組織をいかにつくるかということを学びました。

鹿毛 マーケターを含め、多くのビジネスパーソンは、「デザイン」や「クリエイティブ」と聞くと、小学校の図画工作や高校の美術の授業を思い浮かべるのではないでしょうか。「アートやデザイン=クリエイティブ」と捉えがちです。一般のビジネスパーソンが考えるクリエイティブの定義と、実際に制作に携わる人たちの定義には違いがあるように思いますが、いかがでしょうか。

稲葉 確かに、デザインに馴染みのない方は、クリエイティブ、アート、デザイン、アート思考、デザイン思考などを、すべて同じものとして捉えていることが多いように思います。

「クリエイティブ」という言葉は非常に曖昧なイメージで使われています。しかし、その曖昧さを解きほぐさなければ、適切な第一歩を踏み出すことはできません。

鹿毛 そのための社会活動をされているわけですね。

稲葉 はい。端的に言えば、ひとつは「クリエイティブやデザインは好き嫌いの問題ではない」ということを伝えるために活動しています。産業や商業の文脈で用いられるクリエイティブは、目的に対して最適なものをつくることだと考えています。

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