日本市場の構造変化と、伸びる市場の共通点を捉える
これから伸長する4つのマーケット:富裕層、インバウンド、IP、二次流通【マーケター 藤原義昭氏インタビュー】
2026/07/22
「日本市場は縮小している」「モノが売れない時代になった」──そんな言説を耳にする機会は少なくありません。しかし、本当に市場そのものが縮んでいるのでしょうか。
コメ兵でリユース市場の成長を牽引し、その後はユナイテッドアローズでCDOとしてDXやマーケティングを統括するなど、長年にわたり消費の最前線を見続けてきたマーケター・藤原義昭さんは、「市場は縮小しているのではなく、価値が集まる場所が変わっている」と語ります。
いま起きているのは、単純な市場縮小ではなく、価値が集まる場所や評価される基準が大きく変わる構造転換です。規模の大きな市場は減る一方、規模は小さくとも「選ばれる理由」が明確なものに価値が集中する時代へ。その変化をどう捉え、企業はどこに成長機会を見いだすべきなのか。今回から前編・中編・後編の3回にわたって、藤原さんの視点をもとに、日本市場の構造変化とこれから伸びる市場に共通する条件を読み解きます。
コメ兵でリユース市場の成長を牽引し、その後はユナイテッドアローズでCDOとしてDXやマーケティングを統括するなど、長年にわたり消費の最前線を見続けてきたマーケター・藤原義昭さんは、「市場は縮小しているのではなく、価値が集まる場所が変わっている」と語ります。
いま起きているのは、単純な市場縮小ではなく、価値が集まる場所や評価される基準が大きく変わる構造転換です。規模の大きな市場は減る一方、規模は小さくとも「選ばれる理由」が明確なものに価値が集中する時代へ。その変化をどう捉え、企業はどこに成長機会を見いだすべきなのか。今回から前編・中編・後編の3回にわたって、藤原さんの視点をもとに、日本市場の構造変化とこれから伸びる市場に共通する条件を読み解きます。
「日本市場はシュリンクしている」は果たして本当か?

藤原 義昭 氏
300Bridge 代表取締役
ラグジュアリーリユーストップ企業であるKOMEHYOでマーケティング、IT、マーケティングの役員を務めたのち、ユナイテッドアローズでは執行役員最高デジタル責任者としてPRなどを含めたマーケティング、CRMやデータなどデジタル化を推進しV字回復に大きく貢献したのち、PEファンドにて投資先のデジタル、マーケティングを同時に推進。現在はBX(Business transformation)専門アドバイザリー〈株式会社300Bridge〉代表として、戦略・組織・データを束ね“稼ぐ仕組み”を設計から課題に応じ最適ケイパビリティを編成し伴走している。
300Bridge 代表取締役
ラグジュアリーリユーストップ企業であるKOMEHYOでマーケティング、IT、マーケティングの役員を務めたのち、ユナイテッドアローズでは執行役員最高デジタル責任者としてPRなどを含めたマーケティング、CRMやデータなどデジタル化を推進しV字回復に大きく貢献したのち、PEファンドにて投資先のデジタル、マーケティングを同時に推進。現在はBX(Business transformation)専門アドバイザリー〈株式会社300Bridge〉代表として、戦略・組織・データを束ね“稼ぐ仕組み”を設計から課題に応じ最適ケイパビリティを編成し伴走している。
AIの普及、アメリカを巡る政治・経済の混乱、各地で続く戦争・紛争……こうした出来事を背景に、世界はいま、大きな構造転換の真っただ中にあります。
その中で、日本市場は「シュリンクしている」と言われることが少なくありません。しかし、私は少し違う見方をしています。
確かに、日本では人口は減少し、平均所得も大きく伸びていません。一方で、物価は上がり続けています。こうした前提に立てば、かつてのようにマス市場を前提とし、量を売ることで成長するモデルが成立しにくくなっているのは事実です。
しかし、だからといって、単純に「高単価化すればいい」という話でもありません。
起きているのは、景気が良いか悪いかという循環的な変化ではなく、消費の前提そのものが変わる、不可逆な構造変化なのだと思います。
市場全体が一様に沈んでいるわけではありません。どの時代にも、伸びる市場があれば縮む市場もあります。私が感じているのは、市場が単純に小さくなっているというより、「平均」が消えつつあるということです。
「少しずつ、みんなに売れる市場」が失われる一方で、強い意思や明確な理由を伴う消費には、これまで以上に価値が集中している。つまり、「選ばれる理由」があるかどうかによって、極端な差が生まれる時代になったのです。
だからこそ、コンシューマービジネスを考える際に、市場規模の大小だけを見るのは本質的ではありません。市場が大きければ、確かにチャンスはあるかもしれません。しかしその分、競争相手もすでに大きく、強い。市場規模が大きいことと、自社のビジネスが成立することは、まったく別の問題です。
それよりも重要なのは、「どこに価値が集まっているのか」を見極めることです。そして今、その価値が集まる先は、以前よりもはるかに明確な形で見え始めていると感じています。
真の「価値観マーケット」の時代が到来している
この変化は、一時的なトレンドではありません。消費者の評価軸そのものが変わった結果だと考えています。
これまでの消費は、「今、この瞬間に欲しいかどうか」が中心でした。機能、価格、流行、話題性。そうした要素によって、その場で購入するかどうかが判断されてきました。
しかし最近は、消費がより長い時間軸で評価されるようになっています。その場で売れるかどうかだけでなく、「誰が欲しがるのか」「別の文脈でも価値が通じるのか」「モノだけでなく、その背景にある意思まで次の人に引き継がれるのか」。そうした視点が、消費者の判断基準に無意識のうちに組み込まれ始めています。
つまり、モノの機能や価格だけではなく、その価値が時間や場所を超えて成立するかどうかが問われるようになっているのです。
たとえば、北海道でも沖縄でも同じように価値を持つのか。Z世代だけでなく、中高年にも支持されるのか。そこで問われているのは、場所や年代そのものではありません。その人が持つ価値観や意思です。
同じZ世代でも、推し活をする人もいれば、しない人もいます。一方で、推し活に熱中している中高年も数多くいます。つまり、年代で区切る時代ではなく、価値観で区切る時代へと移行しているのです。
以前から「価値観マーケット」という言葉はありました。しかし今、それがより鮮明な形で現れてきていると感じています。
その背景には、消費者の成熟もあります。SNSの普及によって、この10年で人々が触れる情報量と経験値は飛躍的に高まりました。
たとえば、最近では中学生もメイクに夢中な子どもが多いと聞きます。外出する予定がない日でも、鏡の前でメイクをしています。それは誰かに見せるためではなく、趣味として楽しんでいるのです。
知識を簡単に得られる時代だからこそ、経験値も短期間で積み重なっていく。その結果、消費者の目は確実に肥えています。
この変化が意味するのは、市場全体がなだらかに成長する時代が終わり、極めて短期的かつ局所的に「評価」が集中する時代へと移行したということです。
これから伸びるのは、たまたま運が良かった市場でも、一時的によく売れる市場でもありません。時間を超えて価値が残り続ける市場なのではないでしょうか。
一度評価された価値は、時間をかけて積層され、次の消費や新たな文脈へと引き継がれていきます。そうした構造を持つマーケットだけが、結果として持続的に成長していくのだと思います。
この考え方は、ブランディングにも当てはまります。
ブランディングというと認知を広げることに議論が寄りがちです。しかしこれからは、単に知ってもらうだけでなく、「意味を理解してもらうこと」がより重要になります。
これまでのマーケティングは、認知を広げ、想起させ、できるだけ早く行動につなげることが目的でした。いわば、刹那的な消費を前提とした設計です。
しかしこれからは、時間をかけて関係性を築くマーケティングが求められます。一度得た評価が、時間とともに価値として積み重なり、さらに次の評価を生む。その循環をつくることこそが、これからのブランドにとって重要なのだと思います。




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