SXSW現地レポート #02

TwitterがSXSWに凱旋。嫉妬を覚えるほどの企画で、まだ見ぬ潜在能力を披露【奥谷孝司・風間公太 現地レポート】

Twitterのまだ見ぬ潜在能力が開眼した場

■DELETED BUT NOT FORGOTTEN


 今の時代、どんなに速いタイミングで投稿済みのTweetを削除しても、スクリーンショットなどでその内容が誰かしらに記録されてしまう。特に、フォロワーが多ければ多いほど、たとえ誤送信であっても完全に消し去ることは困難だ。

 「DELETED BUT NOT FORGOTTEN」では、そんな“削除されたが忘れられていない”Tweetが、追悼碑のように静粛に鎮座している。このインスタレーションにもデジタル体験の過去と未来への示唆に溢れている。これから先人はどのようなSNSで人と社会と繋がっていくのか。未来だけでなくデジタルとの過去までも再考させてくれる場にSXSWはなりつつあり、それをSXSWからブレイクしたTwitterが表現していることに面白さがあるのだ。

■11 MINUTES


 さらに別の部屋に進むと、映像コンテンツが上映されている。当時も多くのニュースメディアに取り上げられた出来事だが、2017年11月のある日、突然大統領のTwitterアカウントが閲覧できなくなった。その間、約11分間。この11分間をドキュメント“風”に、多くの人々が振り返る「11 MINUTES」だ。

 11分間を思い出しながら、ある人は深刻“風”に、ある人は悲しげ“風”に語る。感極まって言葉に詰まる“風”の出演者の映像を見ながら、来訪者たちは真面目と滑稽は対義語ではなく、同義語であることに気づくだろう。

■言葉に包み込まれる新鮮な体験


 他にも、大統領の予言者的発言を検証する「TRUMPSTRADAMUS」、米国外の各国へのTweetを世界地図で表した「THE WORLD ACCORDING TO TRUMP」など、来訪者たちを飽きさせないテーマで表現された展示の数々は、見応え十分な内容だ。

 このように、見どころ満載の展示にも関わらず、根底に流れ続ける小気味良さと軽快なリズム感は、文字制限というTwitterならではの特性が一因になっているのだろう。現実世界に拡張された言葉たちに包み込まれる体験の場は、情報インフラの一つとなったTwitterのまだ見ぬ潜在能力が開眼した場でもあった。

 昨今、企業と顧客のコミュニケーションは、InstagramやTikTokなど、画像や動画を使ったリッチなクリエイティブに重きが置かれる潮流があるが、たかが言葉と侮ることなかれ。もし、自社の言葉のコミュニケーションが平坦で何の引っ掛かりの無い状態にあるならば、それを黄信号と捉え、言葉が持つ新たな可能性に挑んでみるべきだと、そういった提言を受けたようにも感じる展示だった。

 最後に、この展示が今年のSXSW Creative Experience “Arrow” Awardsで「Spirit of SXSW」を受賞したことも加えておきたい。このようにSXSWを巣立っていったビジネス、サービスが形を変えてSXSWで存在感を出し、決してそれが先輩ベンチャー企業への迎合や賞賛でもなく、批判とウィットに富んでいることが、これだけ多くの人々を魅了するのではないかと思う。

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