海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #05
中国の企業だけが、なぜGAFAに勝つことができるのか【ニューバランス 鈴木健】
「タイムマシン経営」ではなく、独自のイノベーションが進む
2014年9月にアリババがNY証券取引所に上場し、ジャック・マーが世界的な知名度を獲得したことを皮切りに、中国のテクノロジー企業が注目されるようになった。
だが、いまだに多くの中国企業は、米国企業のコピーキャット(模倣犯)でタイムマシン経営(米国で成功したビジネスをすぐに輸入するモデル)を続けているイメージが強い。しかし、実際のところ中国は、世界的に見ても独自のテクノロジーによってイノベーションが進んだ国のひとつである。
自らもAI研究者でもあり、Google Chinaのリーダーでもあった李開復の著書『AI Superpowers (2018年刊 未邦訳) 』によれば、現在のところAI研究において米国にアドバンテージはあっても、その差は急速に縮まる可能性が高いという。
中国政府が2030年までにAIでグローバルリーダーになる計画を立て、それを資金的に後押ししていることは有名だ。だが、李はそのような政府の方針だけでなく、中国にその計画を加速化するようなリソースが豊かな点をあげている。
まず、その13億という人口から、多くの優秀な人材の資源がある。李開復もそのひとりだが、中国人のAI研究者数は、すでに米国に匹敵している。また、人口に比例した市場の大きさもここ数年のグローバルの経済成長を牽引している。それはつまり、そのままデジタル化が進んだ現代では、獲得できるデータ量が豊富であることを意味する。さらに中国は、国家レベルでアントレプレナーとイノベーションを推進したことで、大きな資金が投入され、多くのスタートアップ企業が誕生している。
たしかに、かつてはFacebookやGoogle、Twitterなどの米国のITサービス企業をそのまま模倣した企業が多かったのも事実である。しかし、李開復が「コロシアムでのグラディエイターの戦い」と称するように、中国の市場競争は熾烈を極めている。ものすごいスピードで進むだけでなく模倣は当たり前で、ある意味、他国では決して実現できないイノベーションの実験場であるのだ。
このことで、中国のテクノロジー業界は、GoogleやFacebookのようなGAFAのグローバルプラットフォームに依存しない、独自のエコシステムを構築している。デジタルマーケティングやビジネスのデジタル化と単純に呼ぶことができないレベルでデジタルトランスフォーメーションを実現し、全く異なるテクノロジーが浸透しているのだ。特にその違いをすぐに理解できるのは、リテール業界である。