海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #05
中国の企業だけが、なぜGAFAに勝つことができるのか【ニューバランス 鈴木健】
中国「ニューリテール」の凄さは、どこにある?
劉潤が書いた書籍『新小売革命(2019年刊)』では、中国における新しい小売の潮流「ニューリテール」、つまりアリババのような新興デジタル企業がECの枠組みを超えて、オフラインの小売を含めた展開をしている現在の競争環境と構造を分かりやすく示し分析している。
劉潤によれば、小売とは、構造的に「人」「物」「場所」に分解することができ、それらをつなぐことに本質があるという。また、そのつながりには「3つの流れ」が存在する。情報の流れである「①情報流」と、物の流れである「②物流」、そしてお金の流れである「③金流」である。
中国の企業が争っているのは、この流れにおけるオンラインとオフラインのそれぞれの長所の組み合わせである。その長所の組み合わせによって、「低効率なビジネスを高効率化する」ことが目的である。
例えば、アリババが従来型の小規模小売をコンビニエンスストアチェーンとして展開する「天描小店」は、アリババのデジタル側で持っている、そのエリアに住む消費者の購買データや嗜好性を店舗のマーチャンダイジングに反映させている。データによるエンパワーメントを通して、従来の小売を高効率化して利益を上げているのだ。
確かにECは便利だが、その場で物が手に入る「即時性」は、オフライン店舗にはかなわない。だが、その物を必要としている顧客を見極めるためにデジタルは役に立つ。
同じく、アリババグループが経営する生鮮食品を扱うスーパー「盒馬生鮮(フーマーシェンセン)」は、買った食品を30分以内に配送するというECサイトを運営している。一方で、リアル店舗はデジタルでは苦手な商品体験をカバーしている。例えば、生鮮食品であれば、その品質や鮮度、味を売り場(フーマーでは、その場で商品を料理して味わうことができる)で確認することができ、クオリティに満足すれば、次回以降はデジタル上からオーダーして30分以内に自宅に配送してくれる。
当然、リアル店舗で購入した商品を店舗から30分以内に自宅に配送することもできるが、劉潤によればフーマーのビジネスモデルは、デジタルでの収益を上げることで従来の食品スーパーよりも高効率化することが目的なのだ。