海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #05
中国の企業だけが、なぜGAFAに勝つことができるのか【ニューバランス 鈴木健】
高効率化させるための顧客ファースト志向
劉潤によれば、最初からフーマーは、オンラインの売上50%以上を目標として掲げている。そのため当初から店舗での現金決済を受け付けず、すべてモバイル決済のみで運営していることが紹介されている。
また、フーマーは、店舗の見た目の面白さもあって30分内配送をするための生鮮スーパーとだけ思われがちだが、アリババが持つビッグデータから正確にそのエリアのニーズや顧客情報をもとに出店され、しかもオンライン上の売上を高効率化するようなシステムを最初から目的として持っている。
劉潤は、これらのことは既存のモデルにおける現場改善のような方法では、決して到達できない思考法であり、「トップダウン」によってのみ可能であると指摘している。
ビービットの藤井保文氏は、このような思考法の違いを「ビフォアデジタル」と「アフターデジタル」という言い方で区別している。中国ではすべてがオンラインとつながり、データがデジタル化された上でのリアルな世界が構築されているため、すでにオンとオフの区別に意味がないのだ。このような「アフターデジタル」の世界であるからこその「ニューリテール」なのである。
だが、そうでない日本の社会からは、「なぜアリババのようなEC企業がリアル店舗を持つ必要があるのですか?」という質問が必ず出てくるという。そういう時、中国人は決まって、「顧客はオンラインとオフラインの関係なく、その時に一番便利な方法を選ぶだけだから」という答えをするという。
顧客ファーストを実現するということは、劉潤が言う「小売の3つの流れ」において、顧客がその瞬間で求める便益によって、オンラインとオフラインを最適化するということである。