中国の「リアルな生活者」の姿を追う #04

アリババとJDで8割を占める中国EC事情、ニューリテールの実力と変革

デジタルテクノロジー技術を積極的に取り入れる小売店

 
アリババ集団(盒馬鮮生)、CES ASIA2018展示会写真
 同様に、アリババやJDといったITプラットフォーマーによるオフライン店舗への進出の動きに負けず劣らず、蘇寧(SUNING)など従来型の小売業もデジタルテクノロジー技術を積極的に取り入れる動きが顕著になっています。

 昨年6月に上海で行われた「CES ASIA2018」の会場は、多くの小売がAIやIoT技術による顧客の購買履歴や嗜好性などのデータを活用しながら商品を推奨したり、また、顔認証技術による個人情報の照合によって自動会計システムの導入を進めたりしています。

 SUNING(蘇寧電器)の展示ブースでは、ショーケースや棚から商品を取り出す瞬間に品物が計上され、自動会計によってレジを通さずにそのまま商品を持ち帰ることが可能なシステムが展示されていました。

 来場者にとって、スーパーなどでレジ前の長い列を待つ人々の光景は、もう既に過去のことのようにさえ思えたかもしれません。レジ会計というステップがなくなり、支払いせずに商品を持ち帰るという行為に対して、違和感を覚えた人も多く、そんな来場者の驚き、戸惑っている様子もかなり印象的でした。
 
SUNING(蘇寧)集団、CES ASIA2018展示会写真
 中国市場は、国土が広く、地域差が大きいことが特徴であるということは自明ですが、その影響で物流や小売業にとって地方展開や新たな客層開拓などへの対応は実に苦労の多いこととなります。一方、地域ごとの風習や文化の違いで社員教育などにもばらつきが多く存在しているため、店員のサービス品質の不均一などへの不満など、利用者も悩みをずっと抱えていました。

 このような状況の中で、近年ではオンラインテクノロジーとオフライン実体験の融合によって、「新零售(ニューリテール)」のような新しいリテールサービスの生活浸透と社会実装が着実に進むだろうと思われます。

 今後、「新零售(ニューリテール)」は生活者にとっては利便性の強化に寄与すると同時に、新しい生活満足の向上につながる重要な生活インフラとして機能していくことも大きく期待できるでしょう。
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