【速報】カンヌライオンズ2019現地レポート #01
「カンヌライオンズ2019」大変化から1年を経て、どうなった?【多摩美術大学 佐藤 達郎】
2019/06/19
人は皆、忙しい。それでもなおかつ、世界の事例からヒントを得たい。高い参加料を払い、多くの時間を使うのだから、それなりの成果を得たい。昨年2018年に起きた「カンヌライオンズの大変化」は、参加者や関係者のそんな要望になんとか応えようとした試みです。
カンヌライオンズは人生の一部?
こんにちは!多摩美術大学で広告論/マーケティング論/メディア論を教えている、佐藤達郎と言います。昨年、2018年にも、カンヌライオンズ速報をお届けしました(速報記事は、こちら)。
ADK(アサツーディ・ケイ)と博報堂DYメディアパートナーズで長年働いて、9年前から現職となりました。カンヌライオンズには2002年に初めて参加してから、今年で16回目の参加になります。こうなると、カンヌライオンズは自分にとって「人生の一部」とも言える?存在です。
そんなカンヌライオンズ(正式名称はカンヌ・ライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル)は、昨年2018年に大きな変化を遂げました。
アジェンダノートをご覧の皆さまには、「この変化がどうなったのか? 深まったのか、定着したのか?」そして、「今年の受賞作の目立った特徴は何だったのか? カンヌライオンズ2019全体の特徴はどうだったのか?」などについて、4回にわたってレポートしていきます。
今回と第2回は、会場からの速報レポートです。
カンヌライオンズの価値は、キュレーション機能
カンヌライオンズは今年で66回目となる、世界で最も影響力を持つ広告/マーケティングの祭典です。20を超える応募部門(ライオンと呼ばれます)を持ち、300を超えるセミナーを開催。文字通り、世界の広告ビジネス/マーケティング・コミュニケーションをリードする存在となっています。
昨年の速報でもお伝えした通り、長年に渡って拡大を続けて来たカンヌライオンズは、強い「スリム化」の要請に直面しました。価値は分かるが、それにしても「複雑過ぎる・長過ぎる・高過ぎる」というわけです。
それに応える形で、大改革に乗り出します。しかしスリム化を謳いながらも、実際には、結果的にライオン(部門)を2つ増やして26ライオン(部門)とし、今年はさらに2増1減で27ライオン(部門)となりました。
どうして、ライオン(部門)は増え続けるのでしょうか?「複雑すぎる」という批判に、運営側は、いったいどのように応えようとしているのでしょうか?
そこで、カンヌライオンズのようなイベントが有するそもそもの意味合いについて考えてみましょう。僕の立場からすれば、それは、いわゆる「キュレーション機能」です。つまり、数え切れないほど存在する世界中の事例から、いったい、どんな事例を見ればいいのかを示してくれる機能、ということです。
カンヌライオンズに応募される事例だけで、年間3万件を越えます。これらをすべて自力でチェックして日々の自分の業務のヒントとすることは、ほぼ不可能です。しかしながら、カンヌライオンズの審査過程で、事例は「選抜」されます。カンヌライオンズの持つキュレーション機能を活用して、我々は「チェックすべき事例」を絞ることができるのです。
このカテゴリーで20件くらいチェックしたいならゴールド以上を見ましょう、それより多くチェックしたいならシルバーにも気を配りましょう、といった具合に。
そして、その「キュレーション」をしているのは、世界中から集まった名だたるエキスパートであり、信頼に値するものだと考えられます。ここにこそ、カンヌ・ライオンズの、あるいはこういったフェスティバルの効用の本質があるのではないでしょうか。