【速報】カンヌライオンズ2019現地レポート #02
「カンヌライオンズ2019」変革は、道半ば。それでも刺激的で、大事なことを教えてくれる
2019/06/21
再び、クリエイターのリーダーシップを発揮するために
まずは初日の朝、実質的に「オープニングを飾る」形になったニック・ロウ氏のセミナーです。ニック・ロウ氏は、史上最も成功したデジタル・エージェンシー「R/GA」のクリエイティブのトップから、老舗の広告代理店ピュブリシスのクリエイティブ・トップに転身した業界の有名人です。
彼のセミナーの題名は、「Creatives in Control (クリエイターこそが、リーダーシップを取るべし!)」。広告ビジネスにおいて、(1)いかにクリエイターがリーダーシップを発揮してきたか、そして、(2)それはなぜ失われたか、そして(3)再びリーダーシップを発揮するには何が必要か、について熱く語りました。
(1)については、フォルクスワーゲンの広告で有名な、50年前のDDBによるクリエイティブ革命が紹介されました。「コピーライターが考えたコピーが別フロアのアートディレクターにまわされて、そこからビジュアルを考える」という、それ以前のシステムから「コピーライターとアートディレクターが必ずセットでアイディアを考える(コピーとアートの結婚)」というシステムへと、画期的な変化を遂げたのです。
(2)については、クリエイティブ・エージェンシーとメディア・エージェンシーが分離されたことを挙げていました。クリエイターのアイディアが運ばれる器であるメディアへの理解が減じたことで、そのリーダーシップも失われていったのだ、と。
そして、(3)。ここでは、さらに3つの要素を掲げていました。①(今の新しい)環境を理解すること、②新しい能力(スキル)を打ち立てること、③コネクション(人と人との繋がり)を通じて価値をつくり出すこと。
なんだそりゃ!?パワー重視
もうひとつ印象に残っているのは、ロンドンの著名クリエイティブ・エージェンシー「Adam & Eve DDB」のクリエイティブのトップであるリチャード・ブリム氏による「The Wonder Of What The F※ck (「“なんだそりゃ!?”が持つ驚くべきパワー」)というセミナーです。
Adam & Eve DDBは、ロンドンの老舗デパート“ハーベイ・ニコルス”や、好き嫌いの分かれる日常食品“マーマイト”などの広告コミュニケーションで有名なエージェンシーです。
リチャード・ブリム氏が、終始訴えていたのは、クリエイティブ・アイディアにおける“WTF=なんだそりゃ!?”という要素の重要性です。データや戦略の重視が叫ばれる中で、いかにもクリエイターらしい、「なんだそりゃ!?パワー重視」の姿勢は、そのきらびやかな実績と相まって、大変に興味深いものでした。
僕自身がクリエイティブ出身なこともあって、この2つのセミナーには大いに共感しました。どんなに時代や環境が変わっても(いや時代や環境が著しく変化している時だからこそ)、エージェンシーのクリエイティブが長年育んできた、こういったチカラこそが重要だと、改めて感じました。
さて、第3回目と第4回目のレポートは、会期終了後、「今年のカンヌは全体としてどうだったのか?」「どんなところに特徴があったのか?」といった総括的なレポートをお送りする予定です。どうぞ、お楽しみに。
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