【速報】カンヌライオンズ2019現地レポート #03

「カンヌ・ライオンズ2019」具体的な変化と、日本にとっての価値

日本からの参加者は、どんな風に過ごしていたのか?


 今年も日本から多くの人が参加していました。もっとも、参加人数は400人ほどで、昨年までに比べるとかなり減ったとのことですが。僕の印象では、若者が増えたなぁ、と感じました。いいことです。その分、各社の重鎮が減ったように思ったのですが、気のせいでしょうか。
メイン会場であるパレⅠの見取り図。ここだけでも相当に広い。
 
 広告代理店では、電通と博報堂がセミナーを行い、パーティも開催していました。制作会社も多くの会社が、独自に場所を借りてパーティやちょっとした飲食の提供を行い、広告代理店のクリエイターとの関係性構築に務めていました。僕は顔を出せませんでしたが、何社かが共同で“制作会社連盟”という形でイベントも行ったようです。
レストラン街、風情のある小径。
 
 さらに現地で、複数の勉強会が行われていました。上記で紹介した制作会社が借りている場所を使って、日本人審査員に来てもらい、リアルな審査状況について話してもらったり、本会場で開催したセミナー内容のフォローアップを日本語通訳つきで行ったり、活発でした。つまり決して、パーティなどによる人脈づくりだけではない活動も見られました。
ある制作会社が借りたスペースでの勉強会。日本からの参加者が数十人集まり、夜遅くまで熱い議論が繰り広げられた
 
 2019年は、日本からの受賞が目立って少ない年でした。毎年、前年より少し受賞数が減るだけで「ニッポン不振!」と言われがちで、僕自身は「単年の成果に一喜一憂しない方がいい」といろいろなところで書いたり話したりして来たのですが、今年に限って言えば、確かに“不振”だったと思います。

 ここ十年(いや二十年かもしれない)で、最少かもしれません。そして「なぜ、そうなのか?」についても今後、考察して行きたいと思います。
 

カンヌライオンズへのコミットをやめるべきではない。


 そういったことも背景にあると思うのですが、複数の場所やシチュエーションで、日本の参加者の方から、「カンヌライオンズに応募したり参加する意味合いとはいったい何なのか?」「カンヌライオンズに時間とエネルギーとお金をかけるより、日本国内のことに注力した方が良いのではないか?」という感想を耳にしました。

 こうした感想と今年の受賞数の少なさは、コインの表裏だと思います。しかし僕自身は、「日本以外の動向を見たり、そうした場所で闘ってみたりすること」は相当に重要なことであり、代表的な場であるカンヌライオンズへの関与を減らすべきではない、と考えています(もちろん個人として、国内のことに注力する人がいるのは、まったく構いませんが)。

 理由はたくさんあるのですが、主なものを2つだけ挙げます。
 
  1. 少子化を背景として日本企業の多くで海外市場が主要な戦場となっている中、海外の動向を無視してはいけない。
  2. ベンチマークとしての日本以外の動向ウオッチングの重要さ。ここには、日本での広告ビジネスのヒントがたくさんころがっている。

 もちろん、個々の人、個々の会社、そして日本の広告産業全体が、カンヌライオンズにコミットする「意味を問い直す」こと自体は、とても良いことだと思います。そうしてこそコミットするメリットも、より顕在化してくるはずだからです。

 さて、次回の最終回は、主な受賞作とその傾向について、お伝えしていきたいと思います。
 
会場内には、Tシャツや帽子などを売る、カンヌライオンズ・グッズのショップも。
 
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