【速報】カンヌライオンズ2019現地レポート #04
カンヌ・ライオンズ2019 受賞作の傾向は、エグゼキューションの逆襲!?
2019/07/03
「今年の受賞作を見ていると、あまりに混沌としている。誰か一言でまとめてくれ!」
現地で、日本からの参加者のそんな声を耳にしました。気持ちは分かります。しかしながら、カンヌライオンズの受賞作は、ブロンズ以上だけで1000点を優に越えています。それを一つの傾向にはまとめられないし、むしろまとまらない方がいい。それが前提です。
しかし、そうは言っても、なにがしかの傾向は見て取れます。主な受賞作を紹介しながら、僕が感じた傾向について紹介していきましょう。
現地で、日本からの参加者のそんな声を耳にしました。気持ちは分かります。しかしながら、カンヌライオンズの受賞作は、ブロンズ以上だけで1000点を優に越えています。それを一つの傾向にはまとめられないし、むしろまとまらない方がいい。それが前提です。
しかし、そうは言っても、なにがしかの傾向は見て取れます。主な受賞作を紹介しながら、僕が感じた傾向について紹介していきましょう。
最大の話題作に見られるのは、「エグゼキューションの逆襲」
ここ数年の話題作を見ていると、「エグゼキューションからアクションへ」とでも言える傾向がありました。
つまり60秒のテレビCM枠の中で心震える素晴らしい「表現(エグゼキューション)」をするのではなく、ブランド(発信側)がなにがしかの「行動(アクション)」をするという傾向です。
例えば、2016年の話題作である「#オプト・アウトサイド」は、アウトドア用品店が年で一番売り上げが見込める日(ブラック・フライデー)に全店を閉店してアウトドアに出ることを呼び掛けた「アクション」が基本となっています。 #OptOutside Case Study
昨年の話題作である「トラッシュアイルズ」は、発信元であるニュース配信会社とNPO法人が、「“ゴミ諸島”を加盟国として認めるよう国連に申請した」という“アクション”が企画の大元となっています。
2019年の最大の話題作の一つであるNew York Timesの「The Truth is Worth It (真実には価値がある)」は、こうした傾向とは一線を画すもので、「エグゼキューション」の素晴らしさを中心に評価されました。
マレーシアの少数民族ロヒンギャに対する迫害を扱ったResolveやISISとの紛争に深く潜入したFearlessnessなど5本のフィルムからなるシリーズで、同紙の記者が真実を解き明かそうと取材する過程が描かれています。 New York Times「The Truth is Worth It」シリーズのResolve
New York Times「The Truth is Worth It」シリーズのFearlessness
緊迫した映像に“新聞記事のシンボル”としてのタイプライティングで画面が構成され、120秒ほどの息詰まるような映像に仕上がっているのです。フィルム部門とフィルムクラフト部門でグランプリを受賞しました。
靴が焼かれ、大統領からも批判されたナイキ
では“今年の傾向”として、大きくエグゼキューションに舵が切られたのかと言えば、そんなことはありません。
ここでは、ナイキが同社の著名な企業スローガンであるJust Do It導入30周年に企画した「Dream Crazy」を紹介しましょう。
アウトドアからテレビCMまで幅広く行われたキャンペーンで、表現巧者のナイキの事例ですからどれもエグゼキューションとしても素晴らしいのですが、しかし、この事例でいちばんのポイントになっているのは、アメリカンフットボール選手であるコリン・キャパニックの起用という「アクション」だと思います。
コリン・キャパニックは試合会場で、人種差別反対の意志を示すために米国国歌に敬意を払わなかったとして、大きな批判にさらされました(その結果、シーズン終了後にチームとの契約は終了し、それ以来NFLでプレイしていません)。そのキャパニックを「Believe in something, even if it means sacrificing everything .(そのことですべてを犠牲にすることになるとしても、何かを信じよう)」というナイキブランドからのメッセージとともに起用したのです。
ナイキDream Crazyの事例ビデオ
最初は、このことが原因で、ナイキの靴が焼かれ、トランプ大統領がツイッターで異を唱え、株価が低迷するという事態に陥りました。
しかし、次第にナイキを支持する人が増え、結果的には売上が上がり、株価も上昇したという事例です。アウトドア部門とエンタテイメント・フォー・スポーツ部門のグランプリを受賞しました。