カンヌライオンズ レポート
ブランドは文化の一部になるか、黙殺されるか。選ばなければいけない。【電通 田辺俊彦】
インスタカルチャーへの皮肉を共感とセールスに変えるDIESEL。
今年のDieselは、インスタグラムのカルチャーを完璧に理解した上で、軽やかに定石を裏切り、両手に収まりきらない数のライオンをミラノに持ち帰った。Dieselのどのキャンペーンも、企画の根っこには「インスタ文化」への愛と皮肉がある。
例えば「Haute Couture=オートクチュール」をモジった「Hate Couture」ではSNS上でインフルエンサーに向けて投稿された「Hate=罵詈雑言」をそのまま服のデザインに反映し、中傷されたインフルエンサー本人たちに着させて投稿させた。
自分への口汚い悪口をスタイリッシュに纏ったインフルエンサーたちの投稿は瞬時に話題になり、限定商品として販売されると同時に完売した。
さらにDieselは、自社に対するHateもデザインに変え、店舗の外装や店員のTシャツにデカデカとプリントしていく。「オンライン上のHateなんて笑い飛ばそう」という勇気あるブランドメッセージは強烈な支持を集めた。
コラボ頼みのファッション業界を皮肉る「MUSTAFA」。
一方「MUSTAFA」キャンペーンは、ビッグネーム同士のコラボでしか話題をつくれないラグジュリーブランドたちへの痛烈な皮肉だ。
Dieselが「究極のコラボ相手」として大々的に発表したのは、ベルリンに住むトルコ移民でありケバブ屋の店主「MUSTAFA」だった。ビッグブランドとケバブ屋のオヤジの異色すぎるコラボはSNSで異様な盛り上がりを見せ、ケバブ屋の前で発表された限定コレクションやコラボグッズは全て完売した。
Dieselはインスタカルチャーとファッションマーケティングの定石を理解し尽くしているからこそ、あえて逆を行くことを選び共感とセールスを獲得しているのだ。