カンヌライオンズ レポート
ブランドは文化の一部になるか、黙殺されるか。選ばなければいけない。【電通 田辺俊彦】
ブレないブランドの人格を発信し続けること。
Wendy’sもNikeもDieselも、自社ブランドの人格=キャラ付けをはっきりと規定した上で、社会やカルチャーの動きに対して常にアンテナを張り、迅速にアクションを起こしている。世論にスピーディに反応しながら自社ブランドのメッセージを発信し、ビジネスを拡大するチャンスを狙っている。つまり彼らは常に社会に対して「ON」なのだ。
では、日本のブランドはどうだろう。ある業界のA社とB社の人格の違いをはっきりと思い浮かべられる消費者はどれだけいるだろうか。
透けて見えてきた、新しいエージェンシーとクライアントの関係。
受賞事例を研究すればするほど感じることがある。上記のブランドにおいては、おそらくエージェンシーとクライアントの間にかつてのような明確な壁はない。
つまり、両者がひとつのチームとしてスピーディにアイディアを出し合い決断できる体制がある、ということ。そうでなければ、NIKEやWendy’sのようなキャンペーンは決して実現しない。
日本企業のカンヌでの受賞数は今年も低迷した。はたして、その要因はアイディアの質だけだろうか。
社会の動きに対してクライアントとエージェンシーが一体となり、速さと勇気を持って反応するための体制ができていないことも大きいのではないか。
エージェンシーとクライアントの、より密接で継続的なパートナーシップのあり方を模索することこそが、社会に無視されない強いブランドを日本から生み出すための最大の近道なのかもしれない。
6日間の密室での審査を終えて、やっと拝めたカンヌの日差しに焦がされながら、そんなことを考えていた。
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