中国の「リアルな生活者」の姿を追う #06
知る人ぞ知る、中国で進化する「イマーシブ型消費」のいま
中国でも注目集まる「体験型消費」
今、中国で消費経済の活性化を支えている多くは、若者の消費スタイルの変化によって生み出されていると言っても過言ではありません。特に、デジタルテクノロジーを活用した事例に注目が集まり、EC型デジタルメディア、販売型のスマートフォンアプリ、KOLマーケティング、ライブ配信、オンラインゲーム、eスポーツなど、例を挙げるときりがないと思います。
一方で、こうした若者の消費行動の変化の兆しは、決してオンラインの世界だけのものではありません。今、オフラインの場でも、若者の趣味行動やそれに関連する各種の「体験型消費」が注目されるようになっています。
先日、当社オフィスでインターン生として働いている大学2年生の女性に、今の20~30代の若者の間では「劇本殺」という体験型ゲームが流行っている、という話を聞いて興味深く感じました。
「劇本殺」とは、ある種の演劇ゲームです。店舗の貸衣装を着用し、脚本の中で決められた役を各自が演じながらストーリーの展開を楽しむようになっています。この脚本には、参加者のキャラクター設定やストーリーの鍵となるキャラクターの情報は記載されていますが、セリフは書かれていません。
参加者の人数は少ない時には5人程度から、多い場合は10人を超える時もあるそうです。実際のプレイ中は各自でセリフを考えながら展開していくという、なかなか難易度の高い遊びですが、週末みんなで楽しむエンターテインメントとして人気のようです。このゲームの醍醐味は、各自に与えられた役を自分でセリフを考えながら演じきることもその一つですが、参加者全員の力で考えながらストーリーを展開することで、最終的にミッションを達成することにあります。
しかも参加者は、自分の役の情報しか知らされておらず、ほかの参加者は誰が仲間か敵かも分からず、ストーリーの中で少しずつ推理していくため、まるでミステリー小説を楽しんでいるような感覚です。