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アセアンのリアルな生活者の姿を追う #01

「なぜタイの中間層は、折りヅル貯金をするのか」博報堂生活総研アセアン帆刈吾郎

透明の貯金箱には、タイバーツ紙幣でつくった折りヅル

 貯金が苦手なタイプだということで、実際どの程度貯金をしているのか、貯金状況を尋ねると見せてくれたのがこの透明の貯金箱です。



 そもそも透明な貯金箱というのは、中が見えてしまって危ないのではないか、貯まったお金が見えたら、使いたくなってしまってよくないのではないか、心の中でそんなツッコミをしながらも、中身を出して見せてもらうと、下のようなものが出てきました。



 中に入っていたのは100バーツ札(約350円)と20バーツ札(約70円)で折った折りヅルでした。非常に綺麗に折れています。しかし、なぜわざわざお札で折りヅルをつくって貯金しているのでしょうか。

 この方いわく、「自分は貯金が苦手で、少し貯まったお金があるとついついコンビニなどでちょこちょこ使ってしまう。そこで、お金を使いにくくするための工夫として、わざと折りヅルにして貯金箱に入れている」ということでした。いわば「折りヅル貯金」とでもいうべき生活の知恵だったわけです。

 しかし、よく見ると今のところ100バーツ鶴が2つと20バーツ鶴が8つ程度しかないようです。「折りヅル貯金」は余り貯まっていないようですが、と恐る恐る聞いたところ、「実際の生活の中では折りヅルにする前に結局大半を使ってしまうので、まだそれほど貯まっていない」ということでした。なるほど、そういうことですか、という不思議な納得感を覚えながら私たちは現場を後にしました。
 

タイ生活者のローン残高実態

 実際、タイ生活者のローン利用状況は、どうなっているのでしょうか。下記は、ローン残高がGDP比でどの程度積み上がっているかを示すデータです。このデータを見る限り、タイの生活者のローン残高は年々高まっていることが分かります。
 
縦軸(%)・横軸(年) 出典:Bank of Thailand
 こうしたローン残高の積み上がりは、身の丈以上の消費助長につながっているとしてタイ国内では批判の対象になっているようです。また実際にローン破産が続出しているという話もあります。この女性も家族の病気など不測の事態が起こった場合は対応できず、やむなくいくつかの商品を売る必要があるようにも見えます。

 しかし、こうしたローンの積み上がりは、伝統的な地縁、家族どうしの互助システムが近代的な金融システムに置き換わりつつある状況を示しているという面もあります。

 また貯金できない体質をローンによってうまくコントロールできているのであれば、希望の生活を手に入れる一つの方法として、一概に否定すべきものでもないのかもしれません。

 生活者が将来は、今よりもっと良くなる、と信じているような発展途上の市場では、ローンを積極的に活用して、希望の生活を手に入れるという考え方は、アセアン生活者においては、むしろ当たり前のことなのかもしれません。
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この記事の著者

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博報堂 / 生活総合研究所 アセアン所長帆刈 吾郎

1995年博報堂入社。マーケティング・プラナーとして得意先企業のマーケティング業務を担当。2005年から2006年にかけて英国ロンドンのダイレクトマーケティングエージェンシー、ブランドコンサルティング会社に出向した後、同年、博報堂に復職。2013年博報堂アジアパシフィック(HAP)のエグゼクティブ・リージョナル・ストラテジック・プランニング・ディレクターとしてタイ・バンコクに赴任。2014年博報堂生活総合研究所アセアンを設立、2017年タイ現地法人化。2018年APACエフィー審査員

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