イスラエルマーケティング月報 #01
日本人マーケターがイスラエルからお届け。スタートアップ大国の素顔に迫る【栗田宏美】
イスラエルから奮闘記をお届け
はじめまして、栗田宏美と申します。流通系カード会社であるクレディセゾンで広告宣伝やデータビジネスに携わり、現在はデータビジネス部に所属しつつCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるセゾン・ベンチャーズを兼務しながら、マーケティングに加えてスタートアップ投資を勉強中です。
昨年夫がイスラエルに赴任になりました。ありがたいことに会社の理解を得ることができ、来年1月にイスラエルに移住し、働けることになりました。セゾン・ベンチャーズから出資したイスラエル企業・Trendemonで、クレディセゾンの一員としてビジネスをさせていただく予定です。
この連載では、イスラエルの面白いスタートアップを毎月ご紹介していきたいと思います。手探りで突き進む私に、このようなアウトプットの機会をいただけて光栄です。「中東のシリコンバレー」と謳われ、近年ハイテク国家として名声を得てきたイスラエルについて、日本のマーケターの皆様にもっと知っていただけたらと思います。
そしてこの連載のもうひとつの狙い。英語も喋れずグローバル人材とはほど遠い私が、挑戦してもがく姿を見て、読者の皆さまに元気になって欲しいと思っています。お手本になることは出来ません、反面教師でもいいんです。すべてのマーケターがイスラエルに注目する必要も無いと思っていますが、私たちは仕事をしている中で「未知の存在」と向き合うことの連続だと思うのです。
特筆すべきスキルを持たない凡庸な私がイスラエルという未知の存在を噛み砕き、咀嚼し、飲み込んで、それをいつの日か活かして、自分の所属する組織や仕事に進化をもたらすことができるかどうか。サポートしてくれた会社や上司、大好きな人たちに、恩返しができるのかどうか。その奮闘記が、何かしら、皆様のお役に立つことがひとつでもあったなら、幸いです。
まず第一回は、イスラエルがなぜハイテク国家になれたのかという背景と、私がイスラエルに何度か訪問して得た現地の生活についてお伝えします。
イスラエルは、エジプトの隣にあります。四国くらいの面積で、国民は900万人いないぐらいの小さな国です。日本との時差は7時間程度(日本のほうが早い)。
イノベーション国家として知られており、1年で生まれるスタートアップは600~700社。2019年上半期のスタートアップのイグジット総額は145億ドル。スタートアップの分野も幅広く、医療・健康・農業・製造業など多岐に渡ります。マーケターの皆さまなら、次に挙げるアドテク関連サービスを耳にしたことがあるのではないでしょうか。
【イスラエル発のアドテク例】
- Kenshoo(広告配信プラットフォーム)
- Datorama(データ分析プラットフォーム)
- Clicktale(アクセス解析ツール)
- Similarweb(Web解析ツール)
- Taboola/Outbrain(広告配信プラットフォーム)
- Youappi(アプリ広告配信プラットフォーム)
- Taptica(モバイル広告配信プラットフォーム)
- CHEQ (アドセーフティサービス)
- Monday(ビジネス業務管理ツール)
ではなぜイスラエルから、多くのハイテク技術が輩出されるのでしょうか?
その秘密は、イスラエルがパレスチナ自治区で戦争をしている「軍事国家」であることと大いなる関係があります。
イスラエルでは18歳になると、男女ともに兵役を課されます。男性は3年、女性は2年~1年半ほどの期間を軍隊で過ごします。イスラエルの国防軍の組織システム・教育システムはかなり確立されており、エリート集団である「タルピオット」、特殊任務部隊の「モサド」、サイバー諜報部門の「8200部隊」などに配属になった人たちは、若くして国家の最先端技術を習得しながら、国防のプレッシャーと日々向き合うそうです。
なので、除隊してから在隊時の知識経験、人脈を使って起業する人が非常に多く、軍事技術の商用転用で成功したビジネスはたくさんあります。私たち日本人マーケターの身近にも、イスラエルの技術は隠れています。
例えば、胃カメラの技術、小型掃除機ロボットの技術もイスラエル発祥と言われていたりしますし、海水から飲料水をつくる技術があったり、最近私が注目している洗濯可能な超薄型RFIDタグなんかも、イスラエルの会社が開発していたりします。