海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #07

マーケティングの「原則」は、この20年でどう変化したのか

共通目線のための「パーパス」と「ミッション」


 『マーケティング大原則』では、シュルツ氏の『マーケティングゲーム』に出てこなかった新しい概念である「ブランドパーパス」が戦略コンセプトの中で語られています。そしてパーパスとは、特に企業において自社が何のために存在し、どんな提供価値を持っているのかを明らかにするものです。そしてこのパーパスは、特に多くの人が関わる企業のマーケティング活動において、同じ目線で判断する基準となるため重要なものです。

 この点はシュルツ氏の『マーケティングゲーム』も同様で、90年代後半では企業のミッション(使命)と言われていたものでしたが、単なる企業ミッションでは素晴らしいことは言っていても実際に人々の行動基準にならないことを自覚していました。そのため、彼は『マーケティングゲーム』の第1部のはじめに、戦略的コンセプトよりも前に自分たちの行動の基準となる「ワーキングミッションステートメント」の策定を主張していました。それは、自分たちの仕事の「最も重要なこと」「信念と行動指針」「誰のためにやっているか」をシンプルな文章で言い表したものです。

 言葉は違いますが、やはりマーケティングの原則の最初の基礎には、この「多くの人々が共通して理解し協働するためのシンプルな考え」が重要であることは共通でした。


 

自らのマーケティングの実務を「原則」から見直す


 今回は『マーケティング大原則』の16の章のうち、最初の「戦略的コンセプト」に言及するに留まりましたが、これ以外にも2020年にアップデートするのにふさわしい様々なトピックが盛り込まれています。

 特に「戦略的コンセプト」に続く、第2章の「マーケティング戦略」はシュルツ氏にはなかった具体的なセグメント戦略が西口一希氏(注:Strategy Partners 代表 )の「顧客起点マーケティング」をベースに語られています。

 また、第6章の「話題化」や第14章の「ソーシャルメディア/オンライン・メディア」は20年前には明らかに存在しなかったデジタルメディアの重要性と、新しいPRの側面について、元ブルーカレント・ジャパン代表で「戦略PR」で有名な本田哲也氏(本田事務所 代表/PRストラテジスト)や、元Twitter Japan広告事業本部長の味澤将宏氏(フェイスブック ジャパン 代表取締役)のインタビューを交えて分かりやすく紹介しています。

 ぜひ、みなさんも本書を読んで実践的な原則を学び、自らのマーケティング活動を見直してほしいと思います。
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