海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #08
幸せをつかむための「戦略」とは何か
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なぜ「人間の幸福」をマーケターが考えるのか
『予想どおりに不合理』などの著作で有名な行動経済学者ダン・アリエリー氏と、西友やドミノピザのマーケティング責任者として活躍し、現在は日本のAIスタートアップ企業で注目されるPreferred Networks(プリファードネットワークス)のCMOを務める富永朋信氏との異色の対談本『「幸せ」をつかむ戦略』が最近、発売されました。
「幸せ」をつかむ戦略というタイトルからもわかるように、「幸福」という大きなテーマの本です。
著書の「はじめに」にある通り、富永氏はマーケティング責任者として、消費者に企業から「合理的に」メッセージを届ける立場にいるうちに、湧きあがってきた疑問から行動経済学を知ったそう。それを学ぶ中で人間の「不合理な面」に気づき、なかでもダン・アリエリー氏が最も人間のコミュニケーション上の複雑さについて理解している点に惹かれたことから、この対談が実現したとのことです。
「幸福について」という大きなテーマは、マーケティングやビジネスとは無縁に聞こえそうですが、実際に今の世の中の視野は「人間」に向かっています。
2020年頭に開催された最新テクノロジーの展示会であるCESのプレゼンテーションでも、テクノロジーの方向が単なるスペックではなく「People(人間)」を中心に語られていますし、3年前に『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』で有名になったNYスターンビジネススクールのスコット・ギャロウェイ教授の2冊目の本はまさに「幸福」がテーマでした。
また、元P&GのグローバルCMOのジム・ステンゲル氏が提唱した「パーパス(目的)」という言葉は、単なるブランドが目指すベネフィットやビジョンというよりは、社会的な意義の高次元の目標を意味していて、これまで語られた「ソーシャルグッド」のような一面的な社会貢献よりも持続的な意味合いを持っています。
実際にステンゲル氏の講義に参加したことがありますが、そのときも彼はパーパスを単なる企業の目的の意味合いではなく、人生の目的として考えることを提案していました。
いずれにせよ、いま人間の「幸福」を考えること自体が広い社会的な文脈においては重要で、それはよりフォーカスされたビジネスやマーケティングのエリアにおいても無関係ではないと言えるでしょう。