イスラエルマーケティング月報 #02
イスラエルのことが知りたくて習った、「クラブマガ」から見えたこと
イスラエル生活がスタート。「クラブマガ」を知ってますか?
シャローム(ヘブライ語で「こんにちは」の意)! 栗田宏美です。流通系カード会社であるクレディセゾンで広告宣伝やデータビジネスに携わり、現在はクレディセゾンとそのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるセゾン・ベンチャーズのメンバーとして、マーケティングに加えてスタートアップ投資を勉強中です。
先月イスラエルに移住したのですが、海外駐在ビジネスの大先輩に「海外駐在は事前準備で全然スタートダッシュが違うぜ!」というアドバイスをいただいたため、仕事はギリギリまで準備させてもらいました。
ですが、肝心の引っ越し準備がお留守になり、出国1週間前までほぼ何もせず…。手伝いのため一時帰国した夫は、私のあまりの体たらくに鬼軍曹へと変貌し、我が家のプーチン大統領を本気で怒らせてしまったと大いに反省しました。
たくさんの同僚や友人に断捨離を手伝ってもらい、母や後輩の助力もありなんとか無事に引っ越すことができてホッとひと息つけたのも束の間、怒濤のイスラエルライフがスタートしました。
初めての海外生活がイスラエルなのですが、拙い英語で買い物や手続きをしたり、毎日が驚きと発見と失敗(あるいはニアミス)の連続。息子の学校が始まり、やっと日常生活のセットアップが完了しました。
今後は、セゾン・ベンチャーズから出資したイスラエル企業のTRENDEMON で半ば出向のようなかたちで働く予定で、現在は就労ビザが下りるのをしばし待っています。
この連載では、イスラエルの面白いスタートアップをご紹介したり、マーケティング視点でイスラエルを捉えたときの気付きをお伝えしていきたいと思います。第2回は、イスラエル人のインサイトを知るために私が習ったクラブマガと、そこから見えたインサイト、そして実際にいま目にしている彼らの国民性について、お伝えしたいと思います。皆様のお役に立つことがひとつでもあれば幸いです。
そもそも「クラブマガ」とは何か?
これはイスラエル軍発祥と言われている護身術兼接近格闘術です。イスラエルは18歳になると男女ともに兵役がある軍事国家。クラブマガ教室が都内にもあり、少しでもイスラエルを理解したかった私は移住前から習い始めました。
――Q. クラブマガは格闘技ですか?
――A. いいえ、違います。格闘技にはルールが存在し、勝敗のために競技をしますが、クラブマガにはルールも勝敗もありません。例えば「首を絞められた時はこう解くと解きやすい」とか、「殴り掛かってきた相手の力を利用してこう返せば良い」とか、一定の“型”はあります。そういう意味では合気道に近いのかもしれません。そもそも、戦場で兵士が自分や仲間の命を守るために使う術なので、勝敗には意味がないというか、生き残るためにはルールも勝敗も関係ありません。“型”はあくまで生き残るために効率が良い“基本のフォーム”みたいなものになります。
――Q. クラブマガは殺人術ですか?
――A. いいえ、違います。基本スタンスとしては、闘わずに逃げて生き残ることを考えています。例えば、クラブマガの基本の構えには2種類あり、「パッシブスタンス」と「ファイティングスタンス」があります。
「パッシブスタンス」は、攻撃してきた相手をなだめて、こちらに闘う意思と危害を加えるつもりがないことを伝え、穏便に済ませるため両手をあげて武器を持っていないことをアピールする構えです(「手を挙げろ」と銃を向けられたときに取るポーズに似ています)。
基本的にはこのパッシブスタンスをとるのですが、パッシブスタンスが通用しないシーンがあります。例えば、相手の目的が誘拐や拉致だったり、自分が壁際にいたりエレベーターの中だったりして、攻撃を回避するには相手を制圧するしかないというシチュエーションです。そんな時の構えは「ファイティングスタンス」になります。ファイティングスタンスは、相手を警戒して利き足を前に出し、顔の前で両拳を構えます。ボクシングの構えと似ていますが、全方位を警戒しなければならないので、肩を斜めにして胴体を斜に構えず、正面に向きます。
――Q. 女性でもクラブマガはできるんですか?
――A. はい、できます。そもそもイスラエルでは女性も軍隊に入ります。体格差や筋肉量の差があっても、護身のためのものなので、女性でも体得することはできます。実際に私が習っていた教室の同じクラスにも、女性が何人かいました。
――Q. どんな技があるのですか?
――A. YouTubeで「クラブマガ」で検索すると動画が色々出てきます。一番分かりやすいのがこの動画です。
クラブマガがよく分かる映画もあります。
『イナフ』(2002年)
主演のジェニファー・ロペスが、クラブマガを使ってDVの夫から娘を守るという役柄を演じています。
『ライリー・ノース 復讐の女神』(2018年)
平凡だった主婦が、夫と娘を殺されたことで、その復讐を果たすため5年の訓練を経て殺人マシンと化します。ジェニファー・ガーナーのアクションが素晴らしいです。