イスラエルマーケティング月報 #02
イスラエルのことが知りたくて習った、「クラブマガ」から見えたこと
戦争を知らない日本と、戦争を知っているイスラエル
漫画『ONE PIECE』のワンシーンで、悪のカリスマ・ドフラミンゴが、こんなセリフを言います。
そのセリフの通り、戦争を知らない平和な日本で生まれ育った私の常識と価値観は、とても限定的なものだと思いました。イスラエル人がどんな価値観を持っているか、そのインサイトを理解するためには、100%日本に最適化されていたままでは難しいのでは…。
そんなことをモヤモヤ考える中で、どうやったら比較的短期間で、イスラエル人のインサイトを自分のものにできるだろうかと調べていくうちに、イスラエル人のアイデンティティは、やはり軍事と切り離せないと思い至りました。
そして、友人が教えてくれたクラブマガが、どうやらイスラエル軍発祥のものであり、東京にも教室があることが分かったのです。
私はそれまで格闘技を習ったことはありませんでした。なので最初に体験レッスンを受けたときは、カルチャーショックを通り越して恐怖でした。
初歩中の初歩なのですが、最初にギョッとしたのは、胸ぐらを掴まれたときの解き方の練習。私は今までの人生で胸ぐらを掴まれたことがなかったので、まずそれだけでもちょっと怖いのに、一時間のレッスンの中で、もうこれは一般人の一生分を超えているだろうというくらい何回も胸ぐらを掴まれて、それを解くという体験はかなり異世界でした。
さらに、前から首を絞められたときの解き方と返し方のレッスンを受けたあと、先生から「じゃあ次に、後ろから首を締められたときの対処の仕方をやります」と言われたときは、耳を疑いました。
そしてそれに留まらず、「はい、次は横から首を締められたときの対処をやります」となったときは、思わず「そんなに多方向からの首締めに対応する必要、ある?!」と、心の中で突っ込んでしまいました。一生分の首を締められ、一生分それを解きました。
他にも、クラブマガは私の日本ナイズされた価値観と安全意識をことごとくぶっ壊してくれました。闘わずに逃げるのが最優先だが、急襲に遭った場合は相手を制圧するしかないので、反射神経や間接の動きを利用してなるべく少ない攻撃で最大のダメージを与えるにはどうしたらいいかを、様々なシチュエーション想定で学ぶという感じでした。
でもそれはあくまでも身体的な話で、もっと精神的なもの、「―闘わなければ」、と覚悟したときのスイッチの入れ方を訓練しているようにも思えました。闘うことは相手に攻撃することであり、攻撃するということは相手に反撃される可能性を多分に孕み、それでも生き残るために闘う。このスイッチを入れるというのは、なかなかできることではありませんでした。
そして、「万が一に備えて全てのことを想定しておく」というのも新鮮でした。クラブマガは、常に自分が不利な状況を想定してレッスンします。例えば、相手がナイフを持っていた(自分は持っていない)、相手が怒っていて歯止めが利かない、相手が物陰に潜んでいて急襲に遭う・・・などです。自分が不利なシチュエーションを考え抜くなんて、追い詰められてこその発想。
すべてのイスラエル人がこの訓練をしていると想像すると、多くの人がイスラエル人の国民性を「ファイター」と表現するのも頷けました。