グローバルガイドライン作成に、英語に奮闘中!スイスの「社窓」から #03

ネスレ本社の新型コロナ対策、危機時に求められるコミュニケーション作法

 

「広告に対する視野」が深くなった理由


 昨年までは、日本というローカルのメディア担当者として、グローバルガイドラインに沿って動く側にいたわけですが、逆にコーディネートする側に移ったことで、メディアに対する見方が変化しました。意思決定のレベルが変わったというのでしょうか。

 例えば、昨年まで数字を背負っていたので、KPIやKGIといった数値ベースで戦術を考えていたのですが、ここではもう少し上のレベルの概念で考えられるようになったと思います。以前の私だったら、現在の状況下でも「キャンペーンの効果・効率をいかに上げていくか」を考えて、できる限りタッチポイントの効率を上げる方法やPDCAから解決策を模索していたと思うのですが、スイスに来てからは「ネスレとして、今と将来がどうなっていって、そういう状況下のお客さまにそもそもどういうコミュニケーションを行うべきなのか、そもそもやるべきなのか、やるのであればどういう広告を届けるべきか」を考えるようになったのです。いわゆる、New Normal/After Coronaのシミュレーションです。

 そう考えられるようになった理由は、色々な国の状況を見ることで、世界のさまざまな状況を知って、その中での社内外問わず色んなコミュニケーションを見て、考える機会が増え、「自分だったら、これからどうするべきか俯瞰してモノを考えるクセ」がついてきたことだと分析しています。

 そんな状況下で各国のメディアプランナーと話をしている中で、気を付けないといけないのが、やはり市場を知っているのはマーケット(各国)で、売上を背負っているのは各マーケットになるため、断言するような発言をできないということです。また、個別に相談を受けた際にはアドバイスしますが、私たちからの指示と受け取られないよう、十分に議論したうえで、その伝え方はすごく気にしています。
 
日本に帰る同僚を、最終日の朝にソーシャルディスタンスを保ちながら見送り。
 

コロナ危機から学んだ「ネットワークの大切さ」


 学びという意味では、他社と綿密に連携する重要性を痛感しています。各国に発信していくにあたり、それぞれの国の状況や政策を調べる作業をしたのですが、それを短期間でするには外部とのネットワークが欠かせません。

 各国のネスレ社員との関係づくりはもちろんですが、グローバルエージェンシーや外部のパートナーとも、緊急時でもすぐにサポートしてもらえる関係を構築しておかなければいけないのです。

 各マーケットの担当者と個別に連絡を取って状況を掴んでいますが、そこで得た情報をもとに、まだ影響が少ない他の国に対して情報を伝えられるのは、とても価値があることだと思います。例えば、中国は最初に新型コロナウイルスが広がった国ですが、そこでどんなコミュニケーションをしていたのかという情報が他国の参考になるのです。

 日本では一般的に、危機に置かれたとき、広告やコミュニケーションを自粛する傾向が強いですが、大事なのはどういうコミュニケーションをしていくかという内容だと思います。

 ネスレでは、消費者コミュニケーションを継続するという姿勢を明確にしています。だからこそ、色々な情報を集めておくことが重要で、今であれば「ステイホーム」「キープディスタンス」がキーワードです。それに対して他社も含めて、どういうコミュニケーションをしているのかを日々チェックしています。

 最後に、前回の記事が出たあと、私の体調を気づかう声をいただいたのですが、現在は元気ですので、ご安心ください。相変わらず初めてのことばかりで、緊張する日々は続いています。

 日本の皆さんも、引き続き大変な状況が続くと思いますので、ご自愛ください!
 
本社の近くにあるワイン畑。17時で、この明るさです。
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