海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #11

プライバシーよりも公衆衛生が優先される事実。コロナが浮き彫りにした「データと正義」

 

社会問題に「明確なコミットメント」を表明したP&G


 このコロナ禍が次に問うたのは、社会の格差や不公正さという問題でした。コロナ禍において起きた人種差別の問題と、それに対する政治的ムーブメントであるBlack Lives Matterです。
 
写真提供:123RF

 これは単に政治的な問題にとどまらず、個人が属するコミュニティや自治体、そして組織である企業、またはFacebookのようなプラットフォームの姿勢も問うようになったのです。

 この大きな課題に対して、もっとも象徴的かつ大胆な企業の取り組みはP&G CMOのマーク・プリチャードが、オンライン開催されたカンヌライオンズ(LIONS Live)で宣言した、新しい企業コミュニケーションについてです。ここで彼は、単なる企業のコミュニケーションが社会課題をどうとらえるかという問いを超えて、それ以上の社会的責任を示しました。

 具体的に言えば、P&Gは「ジェンダーや人種による不平等をサポートする企業活動」という領域や、“Talk”という企業広告のような従来のコーポレートコミュニケーション領域から、今回のBLMを経て“The Choice”という行動喚起に変更し、「人種的な公平性の実現」のために、今後の自社の組織やガバナンスについて宣言したのです。

 特に重要なのは今後、実現すると約束したロードマップである次の4つです(米国P&GのWebサイトから筆者要約)。
 
1) 広告のようなコミュニケーション活動にかかわる取引先を含むサプライチェーン上で、黒人コミュニティや有色人種代表を含む多様性を達成する(まずは自社内で40%の実現)。採用、トレーニングを含む説明責任を改善する。

2) 黒人の所有・運営するメディアやエージェンシー・サプライヤーへの投資を増やすことで、黒人コミュニティと経済の発展を支援する。

3) ブランドに関して、広告コンテンツが黒人やすべての人を正確かつ丁寧に描写していることを確認するために、包括的な見直しをする。

4) メディアチャネル、ネットワーク、プラットフォーム、プログラムの包括的な見直しをする。それらのコンテンツが黒人と全ての人を正確かつ丁寧に描写し、バイアスを助長していないか確認(Facebookはじめ自社の基準を満たしていないコンテンツを持つメディアは、広告を停止)。
 
写真提供:123RF

 これは決して、P&G単体で考えられることではありません。さきほどのデータをめぐる個人と社会の関係と同様に、新型コロナウイルス感染防止という名のもとに社会における今まで可視化されなかったものが可視化され、組織内における人種の割合も含めて、社会の公平性や透明性にまで影響が及んできたと言えるでしょう。

 これは個人が持つ情報が資産として保護されるのではなく、社会的意義を持つということを示します。その意味で、P&Gが言う企業の社会的責任や、アップルの取り組みをとらえると興味深いです。

 なぜなら個人の権利と自由を確保するのが、アップルをはじめとするカルフォルニア・イデオロギー側の立場だったわけですが、今やそれよりも大きな社会の「正義」が語られるようになったからです。

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