アセアンのリアルな生活者の姿を追う #02
タイの地方都市で「マイルド・ヤンキー」に出会う【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】
タイの地方都市・ウドーンターニー
私たちが今回、訪問したのは、バンコクから北北東へ約560キロメートル、イサーン地方にあり、サンスクリット語で「北の町」と名付けられたタイの地方都市・ウドーンターニーです。

ウドーンターニーで美容院を営む若者
このようなウドーンターニーで、今回訪問したのは中心部から10分ほど離れた閑静な住宅街で美容院兼カーオーディオ設置業を営む、サラワットさん(29歳)一家です。

彼の月収は49000バーツ(約17万円)程度で、社会経済階層としてはBクラスに分類されます。
初めてお会いしたときは、いかつい雰囲気でちょっと怖い感じの人かなと思ったのですが、話をしてみると、迫力ある外見とは裏腹に、とても穏やかな話し方をされる人でした。
どうして美容院を営んでいるのかと質問すると、「妻の父は元軍人で、現在、年金暮らしなのだけれど、彼から、家の隣に場所と設備を提供してあげるから美容院をやってみたらと勧められたことがきっかけだった」ということでした。


―それで、妻の父のアドバイスに従ったのですか?
「別にやりたかったわけではないのだけれど、アドバイスに従って学校に行ってみたら、なんとなく技術を習得できたのでやっている」
彼自身、この職業に特段のこだわりはない様子です。
―他にやりたいことはなかったのですか?
「特にこれといって、やりたいことはない。家に居ながらできる仕事なので、家族と一緒にいられるのがよい」
家族と一緒にいられて、食べていけるだけ稼げればよい、といった価値観のようです。
一方、カーオーディオの設置業はどういう経緯で始めたのかについては「元々、クルマで音楽を聴くことが好きで、仲間から頼まれてカーオーディオを設置してあげていたものがなんとなく商売になっている」
「基本的には依頼があってからオーディオを購入して設置してあげるので、元手は特にかからない。依頼は月に2件あるときもあれば、全然ないときもあり、基本的には不定期な副業という感じ」
こちらは趣味と実益を半々でかなえる副業という位置づけのようです。

ちなみにネットで買物をすることがあるのか、という問いには「ウドーンターニー何でも売れます」という地域専用売買サイトを使っていると教えてくれました。私たちのインタビュー中に、このサイトで彼が注文したアイテムを、お店の人が自転車で届けに来ていました。
