イスラエルマーケティング月報 #05

イスラエルで支持される日本製品。BDSキャンペーンと“ものづくり”

 

生活者として暮らすイスラエルで出会った「いいモノ」たち


 イスラエルは、物価の高い国です。感覚値としては、日本の1.5~1.7倍くらいでしょうか。外食したときのランチの平均単価は、60NIS(シェケル)つまり2000円くらいです。

 サービスの質については断然、日本のほうが上。消費者としてのイスラエル人は非常に寛容で、ちょっとしたことにクレームを付けたりしません。サービスを提供する側が強い国です。

 だからこそ進化しないし、改善されない。例えば、イスラエルにはユダヤ教のシャバットという教えがあり、金曜日の夕方から土曜日の夕方まで、ほとんどの店舗が閉まります。金曜日の正午に家族でテルアビブを訪れ、駐車場の従業員に「何時まで空いていますか?」と聞くと、「6時まで」とのことで安心して食事と買い物を済ませ、4時頃に駐車場に戻ったところ…なんと、従業員が誰もいませんでした。さらに、駐車券の処理機がシャットダウンされ、手数料100NIS(シェケル)を支払う羽目に。日本では考えられない、杜撰さですよね。

 一方、モノの質はどうでしょうか。これも、私は日本のほうが優れていると感じます。スーパーマーケットでお菓子を手に取ると、袋が破れていることはしょっちゅうですし、牛乳パックから牛乳がしみだしているのもしょっちゅう。買ったばかりのものがすぐ壊れるものしょっちゅう。息子の水筒が1週間で壊れたこともあります。

 ひとつのものを長く使うという発想が無いのかな?とさえ思ってしまいます。また、「イスラエルのもので、おすすめの化粧品を教えて!」と同僚に聞くと、「ヒロミ、日本のものと比べられるものなんて、イスラエルには無いわよ!」「SHISEIDOと比べちゃうと、イスラエルの化粧品メーカーがかわいそうよ!」と言われるくらい、イスラエルの人々から見ても、日本のモノは品質が良いみたいです。

 しかし、生活者として暮らす中で、好きになったイスラエルのモノもあります。「ShlomitOfir(シュロミットオフィール)」というジュエリーブランドもお気に入りです。一部の高級商品をのぞいて、単価はだいたい120NIS前後(約3600円)で、可愛いデザインがたくさんあります。
 
ShilomitOfirのピアスのラインナップ。個性的なモチーフとシンプルなモチーフが混在。

 そして前回もご紹介したイスラエル発のビューティーブランド「SABON」。シャワージェルやソープの香りが本当にいいですし、フェイススクラブやボディスクラブはツルツルになります。

 SABONより少し安価なLALINも良いです。また、死海の塩を使った高級コスメティックブランドAHAVAも大変人気ですが、かなりの高級品です。SPF30の日焼け止めクリームが30mlで約6150円、ナイトクリームが50mlで約1万2700円、24K(金)を使ったフェイスパックは、249NIS(約8200円)・・・。かなりお高いので私は安価なハンドクリームを試しましたが、少量でしっとりになるし、確かに良い商品でした。
 
薬局でも販売されているAHAVAですが、いかんせん超高級。

 同僚が家族への誕生日プレゼントに購入していたりして、イスラエル人からもAHAVA製品は高品質と評判のようです。しかし、AHAVAは「イスラエルBDS運動(イスラエルの国際法違反を中止させるためのボイコット・不買運動)」の対象になっている製品ゆえ、一部NGOから不買運動を受け、過去に日本から撤退しているようです。

 ちなみに「BDS」は、Boycott(ボイコット)、Divestment(資本撤収)、Sanctions(制裁)の略。いわゆる、不買運動の対象になっているということです。これは、AHAVAの工場がイスラエル入植地にあることに起因します。

 イスラエル入植地というのは、ゴラン高原やヨルダン川西岸地区など、イスラエルが戦争で奪った土地です。つまり国際法においては、ここはイスラエルが占領した土地。占領地でつくられた製品を買うことは、戦争を支援することにつながるとして、不買運動の対象になりうるのです。

 これは、いくら品質の良いものをつくっても、政治上の理由で買ってもらえないということ。占領地の原材料が使われていたり、占領地で作られたりした製品は、どんなに品質が良くても手に取ってもらえない可能性があるのです。

 近年のエシカルブームやSDGsが支持を集めているトレンドからしても、この流れは必然といえます。今や、ストーリーでモノを買う時代なのですから。

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