イスラエルマーケティング月報 #05

イスラエルで支持される日本製品。BDSキャンペーンと“ものづくり”

 

BDSキャンペーンが落とす影。モノづくりの正しさとは?


 AHAVAだけではなく、イスラエル入植地では乳製品やワインも製造されています。例えば、ゴラン高原は、第三次中東戦争をきっかけにイスラエルが占領(1967年)、第四次中東戦争でシリアが一時的に奪還(1973年)したものの、その後、すぐにイスラエルが再占領した土地です。国連平和維持活動(PKO)の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)が活動しているくらい、緊張感のある場所。もともと地の利の資源が少ないイスラエルにとって、イスラエル入植地は死海の塩が採れたり、ぶどうの産地だったり、資源が豊富な土地も多く、手放したくない場所であるのも確かです。

 では、このイスラエルの入植地製品をめぐる問題に対する、グローバルの動きはどうなっているでしょうか。

 BDSキャンペーンは、欧米諸国で特に活発で、日本でも見ることができます。EUは2015年、イスラエル入植地産製品の原産地表示を「イスラエル産」としてはならないとするガイドラインを公表しました。

 つまり、卸売業者や消費者は、ちゃんと「これは入植地で製造された商品だ」と認識したうえで、買うか買わないかを判断することを求められるということです。

 さらに、国連は2020年2月、イスラエル入植地に関わる企業112社のリストを公表しました。このリストが作成された背景には、2016年の国連人権理事会での、パレスチナ占領地内のイスラエル入植地に関連する特定の活動に従事する全企業のデータベース作成を求める動きがあります。

 このリストには、Airbnb(エアビーアンドビー)やExpedia(エクスペディア)、TripAdvisor(トリップアドバイザー)など、グローバル企業も挙げられているそうです。

 今回の記事で、BDSキャンペーンについての私の意見を述べるのは論点がずれてしまうため、やめておきますが、この一連の様子を見ていて、イスラエルに住む日本人として思うことがあります。

 それは、「日本の商品はもっと『日本製です』と世界にアピールして良いのではないか」ということです。日本人にとっては当たり前のことが、他国から見るとものすごい強みになっているということだと思います。

 実際、MINISOU(メイソウ)という小売メーカーがイスラエルではウケていて、よくショッピングモールに入っているのですが、彼らは「日本でデザインされた製品」を全面に押し出しています。

 イスラエル人にとってMINISOUは、安くて品質の良い雑貨屋さん。たしかにアベンジャーズとのコラボ商品もあったり、品質もそれなりに良いのですが、日本の他のブランドで見たような商品も。イスラエル在住の日本人からは「日本で本当につくられていないのでは?」という批判もあります。

 しかし、イスラエル人にとっては、デザインの出自が「日本=信頼できる」なので、その商品がどこでつくられているのか、デザインのオリジナリティや商品の版権は本当に担保されているのか、こだわりがないように思えます(正直、日本人としては複雑な心境ですが・・・)。

 しかしポジティブに捉えると、「日本の製品なら品質が高い」というブランディングに日本は成功しているんだなと、ひしひし感じます。これは素晴らしく、稀有なことです。
 
ショッピングモール内のMINISOU店舗。大きく「Japanese Designer Brand」と銘打っています。

 純粋に品質の良いものをつくれば、売れるという土壌の日本製品は、いくら良質なものをつくっても、その出自でアウトになる可能性があるイスラエル製品に比べて、ものづくりについてのハンディキャップが無い(むしろプラスしかない)ように思えます。

 「戦争している国の商品は買わない」と、政治的背景や国際的な正しさを求められることなく、正当にものづくりで勝負できる環境が日本にはあると思います。

 さらに、もともと日本のものづくりのレベルは高いため、つまり「これは日本でつくったよ!」というアピールをもっとすれば、海外市場でもっと売れるかもしれません。

 そして、日本人はみんなつつましやかでアピールしないので、言いすぎかな?くらいが、ちょうどよいのだと思います。
 
筆者近影。同僚とペアルックになった記念写真。ロックダウンになるまでの期間は、週1ペースで出社しています。
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