【速報】カンヌライオンズ2018現地レポート #04

カンヌライオンズ2018受賞作の傾向は「チェンジ」と「軽妙」志向

「軽妙志向」も評価される傾向も

 とはいえ、広告・マーケティング界が、難しいことや良識的な側面ばかりでは動いていないのも事実です。「チェンジ志向」と相対する形で「軽妙志向」とでも呼ぶことができそうな作品も同時に、高く評価されていました。

 その最たるものが、Filmのもうひとつのグランプリ「It’s a Tide Ad」でしょう。Tideはアメリカで有名な洗剤のブランドです。この広告は、テレビCMの祭典としても有名な「スーパー・ボウル」で流されました。

 「スーパー・ボウル」は、アメリカン・フットボールの全米一を決める決勝戦。もの凄い人気ですさまじい視聴率の高さで有名です。従って、各ブランドはこぞってチカラの入ったテレビCMを制作し、30秒枠4億円とも言われる放送料を支払います。専門誌でもないUSA TODAY紙も放映終了後にスーパー・ボウルのテレビCMランキングを発表するなど、一般人を巻き込んだ全米的なテレビCMの祭典にもなっています。

 このスーパー・ボウルでTideが行ったのは、一種のパロディCM。いかにもクルマのCMらしいシチュエーションやビールのCMらしい場面を描くのですが、違っているのは着ている洋服が異様にキレイなこと。さらに、他社の歴代の有名なテレビCMもパロディ化し、同じく「洋服が素晴らしくキレイだから、Tideの広告だ」とウソブキました。軽妙な作戦で、スーパー・ボウルのどのテレビCMを見ても、ついついTideを思い出すというような状況をつくり出したわけです。
 


 もうひとつ、僕のお気に入りの受賞作を紹介します。Mobile金賞などを受賞したPedigree「Selfie STIX」という施策です。

 愛犬家がスマートフォンでワンちゃんと一緒に写真を撮ろうと思っても、犬はなかなかスマホの方を向いて、じっとしてくれないそうです。そこでSTIXというペディグリーの商品をハメて、スマホの上に括り付けられるクリップを開発した、というもの。ワンちゃんはそのエサ欲しさに、スマホカメラのレンズをじっと見て、めでたくセルフィ―が獲れるというわけですね。軽妙で効果的なアイディアだと思います。

 


 ほかにも、Direct金賞などを受賞したファッションブランドDIESELによる「DEISL―Go With the Fake」や、Print&Publishing金賞などのケンタッキー・フライド・チキン「KFC ‘FCK’」など、「軽妙志向」の受賞作も多数見られました。これらの受賞作、個人的には大好きです。
 
金賞以上の受賞者は、一作ずつ檀上に招かれ、トロフィーを受け取る 
 2017年の例で言うと、受賞作は銅賞以上で1000点を越えています。これだけの量を、なかなか見切れるものではありません。とにかく、たくさん見ようとするよりは、まずはグランプリ中心に金賞くらいまでを眺めてみて、何か興味のある作品をじっくり考察してみれば、(広告コミュニケーション立案以外のお仕事の方でも)、なんらかのヒントが得られるのではないでしょうか。
 
贈賞式後、ごった返すメイン会場の出口。
デジタルサイネージに、「また来年会いましょう!」の文字が。
 4回にわたってカンヌライオンズ2018のレポートをお届けしました。いろいろ変わってもカンヌライオンズは、相変わらず刺激とヒントに満ちた場でした。今後は、どんな風に変わって行くのでしょうか。これからもウォッチングを続けていこうと思います。
他の連載記事:
【速報】カンヌライオンズ2018現地レポート の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録