イスラエルマーケティング月報 #06

日本人マーケターがワクチン接種で体感。イスラエルの国家規模でのデータ活用と多様性

 

ワクチン接種の現場から。1回目の副作用は筋肉痛程度


 まず接種のための手続きですが、基本的にイスラエルの保険に入っている場合は無料でワクチン接種が可能で、指定された病院に行けば良いそうです。私の場合は、夫の会社が親族にも手配してくれました。接種の当日は、インフルエンザの予防接種と同じように体温、体調に異状がない旨や副作用についての同意などを記載する書類を用意し、テルアビブの病院を訪れました。
 
病院の様子。午後1時頃に行きましたが、すでに670人発番されていました。
 
私の待合番号は757!40分くらい待ちました。

 イスラエル保健省が、ワクチン接種をしなかった人と2回目のワクチン接種を終えた人を比較した興味深いデータを発表していました。それによると、次のような内容が書かれていました。
 
  • 感染した後に死亡した人の数は2回目の接種から1週間後で94.5%、2週間後で98.9%、接種しなかった人に比べて少なかった。
  • 感染後に熱や呼吸器系の症状が出た人の数は、2回目の接種から1週間後で96.9%、2週間後で98%、接種しなかった人に比べて少なかった。

 つまり、2回ワクチンを接種して2週間経過すれば、コロナに感染した際に症状が出るリスクと死亡するリスクをかなり軽減できるのでは、ということなのです。

 ここまでイスラエルがワクチン先進国になっている秘密は、イスラエルのデータ活用にあります。開始から3週間で200万人がワクチン接種に至ったこの国は、データ活用による独自の仕組みを作っていたのです。

 「イスラエル経済月報」によると、ファイザー社とイスラエル政府の契約の一部が公開されており、何百万本ものワクチンと引き換えに、政府は接種を受けた人についての膨大なデジタル医療データベースへのアクセスを同社に認めることにしているそうです。つまり、イスラエルは、ワクチンをいち早く確保し、接種を進めるために、ファイザーにデータ活用を許可したということです。まさに、国家規模のオープンイノベーション!    

 イスラエルは全国民の医療記録を電子化していて、その充実したデータはワクチン製造業者にとって非常に魅力的に映るでしょう。イスラエル国民は法律によって公的保険者からひとつを選んで保険に加入することが義務づけられているため、国内の医療記録(たとえばこれまでに接種した全ワクチン、全罹患病歴、全加療歴、処方された全薬剤、アレルギーと過敏反応の詳細なリストや、医療画像、血液検査の結果、医師の訪問歴など)が、その公的保険者と病院がコントロールする膨大なデータベースに全て集約されているのです。つまり完璧なデータが揃っていたからこそ、この局面においてワクチンを確保できたということです。

 ここでマーケターの皆さま、特にデータビジネスに関わる皆さまは、ひとつ疑問に思われるかと思います。「国民のプライバシーは大丈夫?」「事前に国民の同意を取ったのだろうか?」と。つまり、イスラエルの国としてのプライバシーポリシーはどうなっているのかという点です。保健省によると、この取り組みにおいてファイザーに提供されるデータはマクロ情報であり、プライバシーデータではないというような主旨の声明を出していますが、それについては様々な議論が行われています。また、医療情報の機微性を守るため、ファイザーとイスラエル政府は、年齢・性別など以外の個人を特定できる詳細を提供しないことを合意しているとも明言しています。
 
筋肉注射だからか、私は少し痛みを感じましたが、「全く痛くなかった」という方もいました。※個人の感想です。

 接種について、注射は一瞬でした。筋肉注射なので痛みはありましたし、少し血も出ましたが、その他の予防接種と特段違う点はありませんでした。気になる副作用はというと、当日打ったほうの腕に少し筋肉痛のような痛みを感じ、翌日最も強く痛みを感じました。

 しかし、痛いと言ってもあくまで筋肉痛程度で、重い鞄を肩にかけるのはつらいとか、腕を上げたときに違和感と鈍い痛みを感じるレベルのものでした。そして、4日後にはすっかり痛みは消えていました。

 ただ、友人たちによると、1回目よりも2回目のほうが副作用の症状は重い場合が多いらしいので、2回目は心して臨もうと思います。

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