【超速報】カンヌライオンズ2021リモート・レポート #02

「カンヌライオンズ2021」受賞作 解説。広告は“時代の証人”たり得たか?【多摩美術大学 佐藤達郎】

前回の記事:
カンヌライオンズ2021は、すべてオンライン開催に!【多摩美術大学 佐藤 達郎】
 世界最高峰の国際広告賞にしてマーケティング・コミュニケーションの祭典であるカンヌライオンズ。今年2021年はすべてオンラインで、6月21日~25日に開催されました。2020年は会自体が中止で賞審査も行われなかったので、今回2年分まとめての審査が行われたことになります。ここでは全体の傾向と、特に気になった事例を紹介して行きましょう。
 

広告は“時代の証人”。目立った「コロナ禍応援」施策


 こんにちは!多摩美術大学で広告論・マーケティング論・メディア論を教えている佐藤達郎です。ここ数年にわたりこのアジェンダノートで、カンヌライオンズ速報をお届けしています。

 ADKと博報堂DYメディアパートナーズで長年働いて、2011年から現職となりました。カンヌライオンズには2002年に初めて参加してから2019年までに16回現地参加していて、毎年のように傾向や特徴を分析、記事で皆さんにお伝えしたり、研究に活かしたりしています。

 広告は“時代の証人”としての意味合いを色濃く持っています。古くは1969年の「Oh!モーレツ」(石油会社のテレビCM。高度成長期のモーレツぶりを描いた)、そして1989年の「24時間、戦えますか?」(エナジードリンクのテレビCM。仕事にも遊びにも熱狂したバブル期の雰囲気がよく表れている)などが挙げられるでしょう。

 今回、審査された2020~2021年で言うと、何と言っても“コロナ禍”です。コロナ禍の苦しみと、それがもたらしたニューノーマルを世界中の人が共有したという意味で、そうはない稀有な時代だと言えるでしょう。

 カンヌライオンズの部門(ライオン)は28もあり、それぞれのグランプリ(最高賞)を獲った応募作がすべて、「コロナ禍応援」だったわけではありません。英国の生理用品ブランドBodyformによる「#wombstories(子宮の物語)」は、語られることがタブー視されて来た子宮について赤裸々に語り4部門でグランプリを受賞する話題作となりました。
 
Bodyform「#wombstories(子宮の物語)」
 
 3部門でグランプリを受賞したバーガーキングの「Steavenage Challenge」は、弱小チームをスポンサードすることでゲーム内でスーパースター選手に自社ブランドのマーク入りユニフォームを着せるという、お茶目で軽妙な施策でした。
 
バーガーキング「Steavenage Challenge」

 しかし、そんな中でもやはり“コロナ禍応援”をメインテーマとした名作も誕生しています。将来、カンヌライオンズ2021の受賞作を振り返った時、“時代の証人”という意味でも贈賞しておくべきだ、と考えた審査員は少なくなかったのではないでしょうか。

  “時代に寄り添う”姿勢をいち早く取り入れるのは、広告コミュニケーションの得意とするところです。映画よりもテレビドラマよりも小説よりも早く、広告コミュニケーションは、時代に寄り添います。

 そうした意味で、ここでは“コロナ禍応援”のグランプリ受賞作を2つ、ご紹介したいと思います。カンヌライオンズ2021受賞作が“時代の証人”たり得たことの、ささやかな記録としても…。

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