【超速報】カンヌライオンズ2021リモート・レポート #02

「カンヌライオンズ2021」受賞作 解説。広告は“時代の証人”たり得たか?【多摩美術大学 佐藤達郎】

 

防護ゴーグル痕を生々しく描いて、勇気を讃えたDOVE


 まず、ユニリーバ DOVEの屋外広告「Courage is Beautiful(勇気は美しい)」をご紹介しましょう。コロナ禍の初期に医療従事者の方々が感染防護用ゴーグルや医療向けマスクを長時間装着することで、その痕が顔に残ってしまうことがニュースでも話題になりました。
 
ユニリーバ DOVE 屋外広告「Courage is Beautiful(勇気は美しい)」

 それをいち早く取り上げて(Web動画がアップされたのは2020年4月6日、その頃アジェンダノートの僕の記事でも少しだけご紹介しました)、彼ら彼女らの勇気を賞賛、醜い痕が残ってしまっている顔の生々しいアップとの対比で描きました。

 DOVEはスキンケアや石鹸のブランド。長年、REAL BUATY(メークして同じような顔になるのではなく、その人自身が持っている本来の美しさを大切にしよう)というコンセプトを展開していて、今回の屋外広告はこれにも見事にフィットしています。大人数の医療従事者の写真ではなく、個人に焦点を当て、個人名を入れたアプローチも力がありました。

 Industry Craft部門のアウトドア・カテゴリーに応募され、グランプリを獲得しました(他にもう一部門でもグランプリ受賞)。Craftというのは“仕上がりの素晴らしさ”を競う部門で、アイディアもさることながら、真実を写し取った迫力ある写真とシンプルなコピーの配列による“仕上がりの素晴らしさ”が評価されたことになります。
 
 広告コミュニケーションはジャーナリズムではありませんから、時代をただ伝えるだけではなく、美しくとか面白くとか象徴的にとか、なんらかの“仕上がりの素晴らしさ”を持って発信すべきだと僕も思います。

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