アセアンのリアルな生活者の姿を追う #03

アセアンの生活者にとって、消費は将来の収入のための投資行動?【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】

アセアンの生活者にとって、消費は将来の収入のための投資行動

 もし旅行や、美容グッズの購入が単なる「趣味」のためだとすると、それは「消費行動」となります。しかし各国で仕入れた美容関連商品や洋服の購入はネットで販売するための「仕入れ」のためととらえれば、これは「消費行動」ではなく将来の収入を生み出す「投資行動」となります。
 

趣味のための購入(消費行動)+ 稼ぐための仕入れ(投資行動)=「投資消費」


 今回の対象者の行動は、趣味と実益を兼ねているものでしたので、趣味のためだけの消費行動ではなく、それを副業として新たな収入を得ていくことも念頭においた「投資消費」とでもいえるような新しい行動スタイルなのではないでしょうか。

 日本では、副業自由化の議論があるようですが、その一方で東南アジアの生活者は、不足する本業収入の補てんとして、また趣味と実益を兼ねた行動として、副業を当たり前のように生活に取り込んで、希望の生活を手に入れる工夫としているようです。

 そして、モバイルインターネットとSNSの普及により商圏が拡大した結果、彼らが副業で稼げる金額は大きくなっています。

 従来の副業が、内職(部品組み立てなど家庭内でできる小さな仕事)やご近所副業(近所の人を対象にした物販やサービス提供)などにとどまっていたのに対し、モバイルインターネットとSNSの普及が、遠くに住む知らない人への販売を可能にしています。しかも常時お店にいる必要はなく、問い合わせや購入依頼があったときだけ対応すればよいのですから、副業として非常に都合がよいともいえます。

 マレーシアでお会いした別の方は、こうした副業の状況を「置き竿に釣り糸をたくさんたらしておく状態」と表現していました。

 またモバイルインターネットの普及は、彼らに商圏の拡大をもたらしただけでなく、新しい副業について無料で学習する機会も提供しています。彼らにどうやって副業の技術を学んだのかを尋ねると、多くの人が「YouTube動画」で学んだと答えます。

 モバイル普及は、アセアンで暮らす、ごく普通の生活者に、副業を始めるための機会の提供と、副業で収入を拡大する手段の提供をもたらしたといえるのではないでしょうか。

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