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海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #03

「米国中心主義」のマーケティングの世界、そして英国と仏国からの確かな影響【ニューバランス 鈴木健】

大陸的思考による仏国のブランド論者ジャン・ノエル・カプフェレ

 カプフェレは、今でこそ日本でも翻訳本が出ており、多少名前が知られるようになった。

 だが、90年代から2000年代初頭までは 経営的な意義の強いデヴィッド・アーカーや、消費者調査におけるパーセプションを中心としたケヴィン・レーン・ケラーという2人の米国人と比べると、知名度が低かった。

 現在では、ブランドコンサルティング会社が行うブロンド論のアプローチは、ほとんど見なくなった。その理由は、ブランド論が重要視されなくなったわけではなく、その本質的な体系的思考そのものが、テクノロジーやメディアの急速な変化についていけなくなったせいである。

 たかだか10年程度の歴史しかないようなグーグルやフェイスブックの時価総額がブランド論で不動と思われたコカ・コーラやマクドナルドを凌駕するようになった現在、ブランドの構造を見直すよりも、経営的な課題としてテクノロジーを取り込んだり、イノベーションを加速させる事業をスピーディに生み出したりする方が理にかなっている。
 
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 カプフェレを紹介したのは、ブランド論そのものに内在する体系的思考そのものは、米国や英国というよりも、独国や仏国のような大陸的な思考に由来しているからである。電通が採用していたブランドの「ハニカムモデル」は、アーカーというよりカプフェレの提唱する「ブランド・アイデンティティ・プリズム」の方がなじみやすい。

 カプフェレのブランド論の構造的概念とは、分析的というよりも構成的もしくは建築的なものである。それは動的ではなく、静的な存在である。そして無時間的で非歴史的であり、いま目の前にある現象をいったん“カッコに入れてみる”抽象的な作業を通して、ある目的のもとに付置される。

 このようなモデルの原型は、西欧哲学に由来する。その中でも、もっとも影響を与えたのは19世紀のドイツのヘーゲル哲学であり、その思想の特徴は一言でいえば「歴史には目的があり、その発展を構造的に示したこと」である。

 つまり、ある中心をもって世の中の全てのものが配置される巨大なマントラができあがることだ。その結果、「歴史」が再構成される。

 ブランド論には、そのブランドの歴史の起源が示され、時折その原点を見直しすることで再生プランができあがるが、それが中心的な目的をもって再度、非歴史的に要素の一部として置かれることに重要な意義がある。

もちろん、これらはカプフェレだけの特徴ではないが、ヨーロッパのブランド論者のほうが歴史的かつ国際的なブランドを扱うことが多いため、顕著にみることができる。また、米のブランド論が衰退する一方で、カプフェレの示した「ラグジュアリーブランド」のブランド論が注目されるのも、カプフェレが歴史の考察において大陸的な哲学の系譜にあることがひとつの理由ではないかと思う。
 

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