アセアンのリアルな生活者の姿を追う #04

タイの夫婦は、どう家事分担しているのか?日本との違い【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】

夫婦の満足度にギャップがある伝統的な役割分担家族

 ポーさんタオさん夫婦のインタビューからは、どうやら夫婦の現状認識にズレがあることが見て取れました。夫へのインタビューで、彼は家事を少しは手伝っていると主張していたのに対し、妻へのインタビューでは夫は全く手伝ってくれない、というように受け取られていました。

 もちろんこのインタビューだけからは、どちらが真実を語っているというかという判断はつきませんが、双方の認識にズレがあることだけは確かな事実です。

 今回は、夫婦の役割分担のタイプを、次の3つに分けてインタビューと定量調査を行いました。
 

トラディショナル:夫が外で働き、妻が家のことに責任を持つタイプ
シェアリング:夫婦が家事や子育てなどを平等に分担するタイプ
スイッチ:妻が外で働き、夫が家のことに責任を持つタイプ


 更にシェアリングのタイプについては、2つに細分化して分析しています。
 

タスクベースシェアリング: 夫婦がタスクを平等に分担するタイプ
フレキシブルシェアリング: 夫婦で時間があるほうが柔軟に分担するタイプ


 「どのタイプが良い、悪い」という判断をすることが目的ではありませんが、当人の役割分担の満足度をタイプ別にみてみると夫が仕事、妻が家のことに責任をもつというトラディショナルタイプが最も役割分担への満足度が低く72%、一方で最も満足度が高いのは、夫婦がタスクを平等に分担するタスクベースシェアリングタイプで87%でした。

 今回、ご紹介した夫婦のように、トラディショナルタイプは、妻側の満足度が低い傾向にあることが特徴で、夫婦の満足度ギャップも大きい結果となっています。
 
 

伝統的な役割分担家庭は、既にマイノリティ

 では、こうしたトラディショナルな夫婦の役割分担を行っている家庭は、アセアンの国々では依然としてメジャーな存在なのでしょうか。

 次の図は、各タイプ別の割合になります。
 

 伝統的な役割分担のトラディショナルタイプは、約23%にとどまり、夫婦で平等に役割分担するシェアリングタイプが約76%と大多数を占めていることがわかります。

 ちなみにシェアリングタイプの内訳は、タスクベースシェアリングが51%、フレキシブルシェアリングが25%となっています。

 男性優位な価値観が根強く残っていると思われているアセアン各国ですが、家庭における夫婦の役割分担という点になると、既に平等な役割分担が過半数を占めており、主流の考え方、または行動になりつつあることがわかります。
 


 国別にみると、ベトナムとインドネシアではトラディショナルタイプが、若干多くなっていますが、大きな傾向は、さほど違いがないという結果になっています。

 次のグラフは、日本の博報堂生活総合研究所が調査した、日本における夫婦の役割分担タイプの比率です。
 


 夫婦ともに現実は、約7割が伝統型(アセアン調査でのトラディショナルタイプに該当)と回答しています。アセアンは、日本と比べて家庭における夫婦の役割分担は平等化が進んでいると言えるのかもしれません。

 「役割をシェアしながら協力している夫婦」というものがアセアンで広くメジャーな存在になっているとするならば、企業はどのようなマーケティングをするべきなのか。

 こう考えると新しい発想が生まれてくるのではないでしょうか?
 
【調査概要】
アセアンでの調査
◆博報堂生活総研アセアン男女平等意識調査 
ネット調査
一般生活者 男女20~49歳(SECのA~C層を対象)
シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム
総計5000サンプル(各国1000サンプル) 
各国の人口構成に準じたサンプル割り付け 
調査実施 : 2017年8月 

日本での調査
博報堂生活総研 家族調査
首都40Km圏
訪問留め置き調査
妻の年齢が20-59歳の夫婦が同居する世帯
630世帯、計1260サンプル
 
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