ユニリーバ CMO講演で感じた「本気パワー」の大切さ。カンヌライオンズ2024から持ち帰ったもの

 

20周年を迎えたDove「Real Beauty」のすごさ

 まず、「本気パワー」について。大会3日目の 6月19日10時からのセミナーについて紹介することから始めましょう。ユニリーバのCMO Esi Eggleston Bracey氏による「You」と題されたセミナーです。
    
 今年はユニリーバのパーソナルケア商品ブランドDoveが「Real Beauty」を掲げて20周年に当たります。「Real Beauty」は、僕の理解で言うと、「すべての女性はその人固有の美しさ（Real Beauty）を持っている。だから、過度なメイクでみな同じような美しさを目指すのではなく、あなた自身の美しさを大事にしよう」といった主張です。石鹸やスキンケアのブランドであるDoveの主張として納得のいくものです。

 この「Real Beauty」という考え方のもと、カンヌライオンズにおいても、Doveは名作を作り続けてきました。2013年の伝説的受賞作「リアル・ビューティ・スケッチィズ」や、昨年2023年の話題作「#ターン・ユア・バック」などです。

 Esi氏のセミナーは、この「Real Beauty」を中心に幾つかのブランドについて語ったのですが、他のセミナーに比べても群を抜く、胸に迫る素晴らしいスピーチでした。何がこんなに素晴らしいのだろう？と考えてみると、①論理的で理解しやすい内容、②エモーショナルな部分も含まれた話術がすぐに思いついたのですが、それだけでは、他の多くのセミナーと同じです。

 何が彼女のスピーチを、他のセミナーから際立たせているのだろう？ そう考えた時に頭に浮かんだのは、「この人、『本気』で話している」という感覚でした。例えば「Real Beauty」という考え方について、お仕事だから、というだけではなく、ご本人が「本気」で信じている、と感じさせるトークでした。
  
「本気」はフリができません。飾ることができない。盛ることが、できない。「本気」は伝わります。もちろん、上記の①と②があったうえでですが、最後のもうひと押し、彼女のスピーチを際立たせたのは、この「本気パワー」なのだと強く感じました。

 実は、受賞作を見てみても「本気でやった」ことが大きなパワーを与えている、というものも見られました。その点は、次回の原稿で言及したいと思います。