HANNOVER MESSE 2025 現地レポート #01

世界最大規模の製造業カンファレンス「Hannover Messe 2025」に日本企業が注目すべき理由【電通 森直樹氏】

 

世界最大規模の製造業のカンファレンスとは


 ドイツのハノーバーで行われる世界最大規模の製造業のカンファレンス「Hannover Messe 2025(ハノーファー・メッセ)」をレポートする。

 まず「Hannover Messe 2025」とは、どのようなイベントなのかを解説する。公式発表では、「ハノーファー・メッセは、産業変革のための最も重要な国際的プラットフォームであり、ホットスポットです。参加は絶対『必須』です!」と案内されている。

 会場は、ドイツのハノーバー国際見本市会場(Messegelände Hannover)で、総面積約100万平方メートルを誇り、27の展示ホールと7つのパビリオンを備える。東京ビックサイトの5倍の規模で、会場が広すぎて足が棒になる。ただ、米国・ラスベガスで開催される世界最大規模のテクノロジーカンファレンス「CES」のように、会場が街全体で複数エリアに別れているわけではないので、ひとつの会場内で効率的に観て回れるのは良いと感じた。

 イベントには、1600人以上のスピーカー、4000以上の出展者、13万人以上が参加者する。今年は、3月31日から4月4日の5日間に渡り、インダストリー4.0(ドイツ政府が2011年に発表した産業政策)やスマート製造業、エネルギー、製造に関わるデジタルエコシステム、AIやメタバースの製造業への活用、カーボンニュートラル・水素に関係する技術やエコシステムが出展される。ここまでの説明で、読者の7割程度は興味を失せたかもしれない。しかし、私は初めて参加して感じたのは、このイベントが日本の産業にとって非常に重要だということだ。
 

なぜ「ハノーファー・メッセ」に注目するのか?


 日本において製造業であるBtoB領域は国際競争力が高い分野である。工作機械や半導体製造装置、産業用ロボット、ファクトリーオートメーション、素材など、製造業のバリューチェーンを支える数多くの企業が存在し、世界シェア上位を占める製品群があり、現在の日本において非常に重要な分野であることは疑いないはずだ。

 私は、これまで10年以上に渡り米国・ラスベガスで開催される世界最大規模のテクノロジーカンファレンス「CES」に参加し、Agenda noteなどのメディアで発信してきた。

▶︎参考連載:本記事の筆者である森氏が寄稿した「CES 2025 現地レポート」連載

 CESは、主に家電や自動車、IoT、AIを含む新興技術、そしてテクノロジー全般がテーマのカンファレンスであり、BtoB領域の存在感が高まっているとはいえ、BtoCが主役のイベントである。そこで、世界最大規模の製造業、それもBtoBが主役であるグローバルカンファレンスのハノーファー・メッセに注目したのだ。

 ただ、私はイベントの主要分野である工作機械、ファクトリーオートメーション、インダストリー4.0などの領域は、専門外と言ってよいだろう。そこで本レポートはあくまでハノーファー・メッセにおいて、ドイツや米国を中心とした世界のリーダー企業がどのような発信を行っているのか、主要なメッセージは何か、というコミュニケーションに焦点を当ててレポートする。

 日本のマーケターにはまだ知られず、情報も少ないハノーファー・メッセについて詳しく理解してもらい、国内のBtoB製造業にとってマーケティングやブランディング活動の参考になればと思う。
 

ここでも影響力を発揮するMicrosoft、Amazon、Google


 ハノーファー・メッセの会場に来て思ったことは、Microsoft、Amazon、Googleがここでも威光を放っていることだ。各社が提供するクラウドサービスのMicrosoft Azure、AWS、Google Cloudは、それぞれ製造業のエコシステムに深く入り込んでいると再認識した。

 各社ともに、「AI×データ」や「クラウドサービス×製造プラットフォーム」を掲げ、製造業のバリューチェーン全体の変革を標榜している。また、SIEMENS(シーメンス:ドイツ・バイエルン州のミュンヘンにあるテクノロジー企業)とのコラボレーションが目立っているように感じた。各社のブースでは、個別のプレゼンテーションやセッションを設けていて、SIEMENSやNVIDIAと対談する演目が多いようだ。
     
Amazonは、インダストリアルAI、IoT、データ分析、そして製造業をはじめとするさまざまな産業向けのパートナーソリューションに焦点を当てた展示を行っている。
  
Googleは、AIを活用した製造業、サプライチェーンの変革に焦点を当てて出展している。
     
Microsoft は、Microsoft Cloud for Manufacturingを中心とした展示がなされている。AIを活用したイノベーションの加速、工場運営の最適化、製造バリューチェーンへのCopilotの活用などが展示されている。会場では、巨大なロールス・ロイス製のジェットエンジンが展示されており、MicrosoftとSIEMENSによる協業ケースとして紹介されている。Microsoft Azureを活用したモデルベース設計と機械学習によって、設計の効率化と品質向上を実現している。

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