「ADFEST」萩原幸也氏レポート #04
世界が注目のエージェンシーGUTが語る「勇敢さの6つの指標」【ADFEST 2025レポート:リクルート萩原幸也氏】
“Life’s too short to make shitty ads.”
次に、スピーカー・セッションの様子をお届けします。


ステージは2つあり、並行して進行していきます。メインステージでは日本語の同時通訳が入りますので、英語に不安がある人でも安心です。

私はメインステージのセッションはほぼすべて見ましたが、今年はテーマの捉え方が広く、さまざまな内容のセミナーがありました。その中でも事前から注目されていた、GUT Asia CCO のカルロス・カマーチョ氏と、GUT Asia Head of Strategyのベリンダ・シム=マック氏のセミナー「When Bravery and Business Collide(勇敢さとビジネスが衝突するとき)」をレポートします。
GUTは、2018年に創立した若い独立系エージェンシーです。すでにカンヌライオンズでもグランプリを何本も獲得しており、いま最も勢いのあるエージェンシーでしょう。彼らは自社が手掛けた事例を紹介しながら、「GUTの勇敢さの6つの指標」を紹介しています。
広告業界では「勇敢なクリエイティブ vs ビジネス成果」という構図で、エージェンシーとクライアントが対立関係に見られがちです。しかし、その2つは対立するどころか、衝突したときこそ“魔法”が起こるのだと主張しました。さらに「クライアントが勇敢じゃない」というのは言い訳であり、勇気は育てるものだと提言していました。
たとえば、アルゼンチン・ブエノスアイレスの大手EC「Mercado Livre(メルカドリブレ)」は当初、大胆なアイデアに慎重でしたが、コロナ禍でInstagram上のプライドパレード(Feed Parade)などの画期的なキャンペーンに挑戦し、結果的に世界的な評価を得て、米国・ニューヨークのTIME誌の「世界で最も影響力のある企業100」にも選出されたそうです。
MERCADO LIVRE - FEED PARADE
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- GUTが提示する“勇敢さの6つの指標”
- 誰もやったことがないことに挑戦する
- 実行が難しいことに挑む
- 社会的な対立や緊張に立ち向かう
- 何かの信念を真摯に表現する
- 商品や文化にまつわる「真実」を語る
- その時代ならではの空気(Zeitgeist)を捉える
次に、セミナーの中でも触れられた、この指標を踏まえた事例をいくつか紹介します。
- 事例:Heinz「Hidden Spots」
約80%のゲーマーはプレイ中に何かを食べているが、オンラインではゲームを止めることができない事実に着目。そこでシューティングゲームの「Call of Duty」とコラボし、ゲーム内の「安全地帯」の中で食べられるように設計しました。ゲーム内の要素と、リアル商品(バーガーラップ)を連動させ、13カ国1200万人にリーチし、5億インプレッションを獲得しました。
Heinz - "Hidden Spots" campaign (case study)
- 事例:NotMayo 「Hate it. Try it.」
植物由来ドレッシングNotMayoがリアルなマヨネーズと変わらない味であることを証明するために、マヨネーズ嫌いに試食させるという「逆張り戦略」でSNSバズを起こしました。220倍のエンゲージメント、14%の購買意欲向上を実現しました。
MayoHaters
- 事例:DoorDash「Self-Love Bouquet」
デリバリーサービスのDoorDashは、バレンタインデーを「自分自身を祝う日」として転換。ローズ11本+1ローター付きの花束を送るサービスを展開しました。競合他社が伝統的なカップルに焦点を当てている中で、見過ごされがちな自分への愛の形を優先し称える活動を行ないました。
DoorDash - Self-Love Bouquet (case study)
今回のセミナーの最後には、GUT創業者のアンセルモ・ラモス氏の言葉で締め括られました。
“Life’s too short to make shitty ads.”(つまらない広告を作るには、人生は短すぎる)

さぁ、後編では今年のアワードを受賞した海外の注目事例を紹介します。どの作品にも「COLLiDE(衝突)」を恐れない勇敢さが潜んでいます。
※後編 「ADFEST 2025」受賞11作品をリクルート萩原幸也氏が解説、衝突の先にある新しい可能性が見えてくる に続く
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