カンヌライオンズ2025

ビジネスパーソンこそカンヌライオンズに学ぶべき ーヤングカンヌ日本代表に住友商事の社員が挑戦する理由

  世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」が、今年も6月16日~20日に開催される。そのプログラムの一つとして開催される30歳以下の若手向けコンペ「ヤングライオンズコンペティション(ヤングカンヌ)」は、一般的には広告会社のクリエイターが参加するイメージが強い。今年、そのヤングカンヌのデジタル部門に日本代表として挑むのが、住友商事でメディア・デジタル事業に携わる世一麻恵さんだ。
 クリエイティブの素養は、一般ビジネスパーソンの仕事にどう活きるのか? 事業会社のマーケターにとって、カンヌライオンズはどのような意味を持つのか? 次世代を担う気鋭のビジネスパーソンに、今回のチャレンジの背景にある狙いと思いを聞いた。
 

総合商社の未来と、ヤングカンヌへの挑戦

ー 世一さんの担当事業・担当業務について聞かせてください。

 住友商事には計9つのグループがあり、私は「メディア・デジタルグループ」に所属しています。「メディア」「デジタル」「通信」という大きく3つの事業で構成されていて、ケーブルテレビ事業や映像コンテンツ関連事業、テレビ通販事業、デジタルソリューション・コンサルティング・プラットフォーム事業、スタートアップ投資、国内外における情報通信インフラ事業など、幅広い事業を手掛けています。

ー 住友商事はメディア・デジタル事業に強いことで知られていますね。

 総合商社というと、たとえば貿易や資源開発など、“重厚長大”なビジネスのイメージが強いと思いますが、実は“総合商社っぽくない”事業も多いんです。私が所属するメディア・デジタルグループもそうですし、食品スーパー・ライフスタイルブランド・ドラッグストアなどのリテイル事業を展開するライフスタイルグループも、一般的な総合商社のイメージとは少し違うかもしれません。

 その中でも私の出身であるメディア事業は、住友商事のアイデンティティの一つである領域です。日本No.1のケーブルテレビ事業「J:COM」、テレビ通販「ショップチャンネル」のほか、数十年にわたり映像・映画事業にも携わってきました。新たな事業もどんどん拡大しています。たとえば、2017年にはSCデジタルメディア(現・SCデジタル)を設立し、データマーケティング事業やブランドコミュニケーション事業などを手掛けるようになりました。他にも、昨年度には日本のアニメを中心とした映像コンテンツのグローバル展開を手掛けるREMOW社に出資するなど、その事業領域を拡大し続けています。

 貿易中心だった総合商社のビジネスですが、昨今はどんどん事業投資・事業経営にシフトしてきています。日々、世界中で新たな事業が生まれていますし、当社内には「0→1 Next」という社内起業制度もあり、こちらに積極的に取り組んでいる若手も多いです。


住友商事株式会社
メディア・デジタルグループ
世一 麻恵 氏

▶︎1999 年生まれ(26 歳)、東京都出身。早稲田大学在学期間においては、学生ショーケース・ライブイベントの企画演出等に携わる。
▶︎2021 年、住友商事株式会社に入社。現代アート・スタートアップ事業投資・メディア・企画・アニメ等、コンテンツ領域における新規事業開発を担当。(2021-2023 現メディアコマースユニット、2023-2025 メディアコンテンツユニット、2025-メディアデジタルグループCFOオフィス企画戦略チーム)
▶︎2024 年、ヤングカンヌ(カンヌライオンズ U-30 部門)において、総合商社社員として初の日本代表選出。2025 年、フランス・カンヌにて、世界本戦に出場予定。


ー 今年、ヤングカンヌ デジタル部門の日本代表として本戦に出場されます。出場に至った経緯を教えてください。

 私は早稲田大学在籍時、学内イベントの企画運営をする団体に所属していました。周りの友人は広告業界やメディア業界に進む友人が多く、ヤングカンヌにチャレンジしている人も多いんです。毎年秋になるとヤングカンヌの話題がInstagram上に増えるのが恒例で、身近な存在ではありました。

 ヤングカンヌは2人1組で参加するアイデアソンなのですが、今回一緒にチャレンジする相方(岡田大毅さん)も大学時代からの友人で、学園祭の企画運営を共にしてきた仲間の一人です。応募開始直前に「相方を募集している」とInstagramに投稿しているのを見て、「できることがあるかも」という思いと、「世界大会を目指すのって面白そう」という好奇心をもとに、私から連絡しました。

 会社には、日本代表に選ばれてから報告しました。もともとは「夏休みという位置づけで、自腹で行こう」と思っていたんです(笑)。

 社内でヤングカンヌの話をする中で、実は住友商事には、3年連続でカンヌ視察に社員を派遣している部署があることを知りました。ライフスタイルグループの経営企画を担う組織が「未来デザイン施策」という新規事業開発のプロジェクトを進めており、毎年現地視察をしているんです。初年度に派遣されたメンバーの中に“カンヌ愛”に溢れる方がいるのですが、その方をはじめとする社内関係者が今回の出場を応援してくれたこともあって、社名を出して出場することになりました。


ー ヤングカンヌへの挑戦は、世一さんにとってどんな意味があるのでしょうか?

 高校生の頃から、「アイデアを実装する」ことに強い関心がありました。大学で商学部を専攻したのも、就職先に総合商社を選んだのも、アイデアを社会に実装できる人になりたかったからです。

 アイデアを発想し、それを実装して、世の中に広げていくーーその過程にはたくさんの壁があります。ヤングカンヌは、そうした壁を超えてアイデアを具現化していくためのHow Toを実践的に学べる他にない機会ではないかと思い、チャレンジすることにしました。

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