London International Awards
【LIAレポート】世界のファンクリエイティブ最前線を盗みにラスベガスへ。出会った金言は “Inspired by your brief”
世界5大広告賞のひとつ「London International Awards(以下、LIA)」が、9月25日~10月3日の9日間、米ラスベガスで開催された。「Created for Creatives(クリエイターのために創られた賞)」として1986年に創設され、今年40周年を迎えたLIA。広告、デザイン、パッケージデザイン、データ、テクノロジー、クラフト、ヘルス、ファーマ、ミュージック、PR、イノベーション、ストラテジー、B2B、ビジネス変革、ブランデッドコンテンツ、メディアといったあらゆる形態のクリエイティブ作品を審査対象とする。
LIAにおいて、アワードと並んでもうひとつの柱となっているのが、次世代クリエイターを対象とした招待制の教育プログラム「Creative LIAisons(クリエイティブ・リエゾン:以下、LIAisons)」だ。フランス語で「つなぐ」を意味する「Liaison」が名前の由来。2012年以来、世界中から選ばれた約300人の若手がラスベガスに集い、トップクリエイターによる講義や、ワークショップ、実際の審査プロセスの見学、他国の同世代との交流を通じて、グローバルな視野とネットワークを形成する機会となっている。
このLIAisonsに日本から参加した若手クリエーターに、プログラムの内容や、体験から得られた気づきや学び、今後の仕事に役立てたいことなどを振り返ってもらった。
今回の執筆者は、2020年にADKに入社し、現在はADKマーケティング・ソリューションズでコピーライターとして活躍する大見聡仁氏。バーガーキングの「Whopper Detour」が憧れのキャンペーンだという大見氏。LIAの現地で同キャンペーンを手がけたクリエイターとの対面を果たし、ブランドの課題を解決しながらファンも増やすアイデアを生み出すためのヒントを得ることができたと振り返る。
LIAにおいて、アワードと並んでもうひとつの柱となっているのが、次世代クリエイターを対象とした招待制の教育プログラム「Creative LIAisons(クリエイティブ・リエゾン:以下、LIAisons)」だ。フランス語で「つなぐ」を意味する「Liaison」が名前の由来。2012年以来、世界中から選ばれた約300人の若手がラスベガスに集い、トップクリエイターによる講義や、ワークショップ、実際の審査プロセスの見学、他国の同世代との交流を通じて、グローバルな視野とネットワークを形成する機会となっている。
このLIAisonsに日本から参加した若手クリエーターに、プログラムの内容や、体験から得られた気づきや学び、今後の仕事に役立てたいことなどを振り返ってもらった。
今回の執筆者は、2020年にADKに入社し、現在はADKマーケティング・ソリューションズでコピーライターとして活躍する大見聡仁氏。バーガーキングの「Whopper Detour」が憧れのキャンペーンだという大見氏。LIAの現地で同キャンペーンを手がけたクリエイターとの対面を果たし、ブランドの課題を解決しながらファンも増やすアイデアを生み出すためのヒントを得ることができたと振り返る。
ファンづくりのレジェンドから、ファンクリエイティブを学んでくる
どうしたら、こんなヤバいアイデア思いつくんだ。
どうしたら、実現までできちゃうんだ。
そんな憧れのキャンペーン、皆さんにはありますか?
私の場合は、バーガーキングの「Whopper Detour」。ライバルであるマクドナルドの店舗数の多さを逆手にとり、マクドナルドを、ワッパー1セントクーポン配布スポットにしちゃうというキャンペーンでした。

大見聡仁
ADKマーケティング・ソリューションズ
コピーライター
1995年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、2020年ADKに入社。量子光学の研究をしていたはずが、気づけばコピーライターに。結晶に光を当てるよりも、課題や価値に光を当てる今の仕事が好きだったようです。Young Spikes 2024 日本代表、本戦4位。コピーを武器にグローバルで活躍できるひとになりたいです。
ADKマーケティング・ソリューションズ
コピーライター
1995年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、2020年ADKに入社。量子光学の研究をしていたはずが、気づけばコピーライターに。結晶に光を当てるよりも、課題や価値に光を当てる今の仕事が好きだったようです。Young Spikes 2024 日本代表、本戦4位。コピーを武器にグローバルで活躍できるひとになりたいです。
マクドナルドを、バーガーキングユーザーを生み出す場所にしてしまうというこの悪ノリ感、自分がお客さんだったら、絶対ファンになってしまうと思いました。と同時に、こんな悪ノリ、怖くてとても提案できないと絶望しました。
それを手がけたクリエイターが、LIAisonsに講師で来るらしいぞ…!?
どうしたらブランドの課題を解決しながら、ファンも増やせるアイデアを実現できるのか。世界のファンクリエイティブ最前線を盗みに行きたい。そんな想いで、ラスベガスへと飛び立ちました。
グローバルエージェンシー「Triple Sevens」の結成
LIAでの一週間は、まるで多国籍エージェンシーで働いているような気分の一週間でした。
その象徴とも言えるのが、コピーライターとアートディレクターの9人でチームを組んでクライアントにピッチするWorkshop。1日でアイデアを考え、プレゼンを作り込み、提案までするハードなプログラムです。
オーストラリアから来たLaura、南アフリカからのJoey、フランスからのAna、ドイツからのJohannesとFinn、ニューヨークから来たLeonardoとSamuel、コロンビアからのCamila、インドから来た Siddharth、そして私で、グローバルエージェンシー「Triple Sevens」(7班だったということと、ラスベガスでの大勝になぞらえて)を結成。
「君はコピーベースなの?アートベースなの?」「どんな広告が好き?」「どんなCM普段作ってるの?」「え、君の国でもダジャレでコピー書くの?」「やっぱプレ前は徹夜とかする?」と、たわいもない会話からはじまり、当たり前なのですが、世界には自分と同じように働いている仲間がいるんだと嬉しくなりました。

Triple Sevenのみんなと。
コンテンツ文脈を通して、ブランドとお客さまの絆をつくる
そしてクライアントは、オーストラリアで体験型のショッピングモールを展開するWestfield。彼らが大切にしていたのは、コミュニティーづくり。Westfieldを、家族や友人との絆が生まれるきっかけになるような場所にしたいと考えていました。
嘆いていたのは、特にコロナ禍以降、オーストラリアで深刻化する若年層のデジタル依存。人と人との直接的なつながりが減っていることでした。Disneyとコラボすることで、みんながリアルで強くつながれる体験をつくれないか。Disneyのファン文脈を使って、Westfieldの強固なファンをつくれないか。これが私たちに課せられた課題でした。まさに、ファンクリエイティブ。Westfieldのマネージャーと、Disneyのコンテンツマネージャーからの熱いオリエンが続きました。

Disneyのファンをつくっていないか?Westfieldのファンをつくれているのか?
アイデアづくりは、Crazy 8’sという、8分間で8アイデアを考えて、チームでシェアし、投票するを繰り返す、まさにタイムアタックスタイル。Workshopを主催するAKQAで使われる強制アイデア発想法のようでした。頭はフル回転。隣のドイツ人コピーライターが猛烈なスピードでアイデアを書き出していく中、自分も負けないぞと競い合うようにしてアイデアを考えていきました。
さほど英語が流暢でもない私が、どうチームに貢献できるのか。国境を越える自分の武器はなんだろう。コピーライターとして、ファン文脈の発見、そしてネーミングにこだわる作戦に出ました。
「例えば、『Force for Lovers』というキャンペーンを思いついたんだけど…」そう語りはじめると、キャンペーン名を聞いただけで、そのアイデア好きかもと、前のめりに耳を傾けてくれました。Star Warsでは、フォースは敵を倒すために使うんだけど、ここではWestfieldの商品を動かして、大切な人に贈り物をするために使うんだと説明すると、素敵なアイデアだねと褒めてくれました。
他にも、「これは、親と子の関係を、一番強い相棒にするアイデア。まさに、ジェダイとジェダイマスターのような…」と語りだすと、その視点いいかもと身を乗り出して聞いてくれました。それは、「Galaxy Cart Ship」というアイデアで、ショッピングカートの壁面をStar Warsの宇宙船のように親子でデザインできるディスプレイ仕様にすることで、カートを押す時間を、宇宙船を操縦するジェダイとジェダイマスターのような一体感を味わう時間に変えるアイデアでした。
ドイツ人のコピーライターが出したアイデアで強烈に印象に残っているのは、「NO NET」というキャンペーン。まさにダジャレなのですが、スパイダーマンの糸(スパイダーネット)のような電波妨害線を店中に張り巡らせて、強制的にインターネットを遮断し、みんながスマホを置いて、リアルで会話するきっかけをつくろうというアイデアでした。大胆すぎる発想に驚きましたが、コンテンツ文脈に乗ることでお客さんも喜んでくれるのではと思いました。
様々なアイデアがチームで出る中で、議論になったのは、「Westfieldのブランドのファンをつくれているか」という視点。Disneyのファン文脈にただ乗っかるのではなく、Westfieldの価値にファン文脈を乗せることが大事なのではないかという話になりました。
決定案は、「THE IMPERIAL EXCHANGE」。Westfieldではドルの代わりに、Star Warsの銀河通貨を導入するというシンプルな発想なのですが、それにより、「モノとお金を交換する」という買い物自体が、「Star Warsの世界に入り込むような体験」に。銀河通貨を交わす時間が、みんながStar Warsの世界の人になりきって、アナログでつながる楽しい時間に変わっていくのでした。
Disneyのファン文脈と、Westfieldの本質的な価値(=買い物)が重なった時、新しいWestfieldのファンが生まれる。このド真ん中を見誤らず、射抜くことができるかが、ファンクリエイティブにおいて欠かせないことなのではと気づきました。

どのアイデアを推すべきか、議論は紛糾しました。




メルマガ登録















