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【LIAレポート】世界のファンクリエイティブ最前線を盗みにラスベガスへ。出会った金言は “Inspired by your brief”
国境を越える、自分だけの武器を。
日本で働いていると、打ち合わせはすべて日本語。だから思いついたアイデアは、うまく話せれば、なんとなくウケる。ある程度、何でも屋になれている気になっていました。でも思い通りに話すことのできない国に来てみたら…なんて自分は無力なのだろうと愕然としました。
だから、普段から多国籍チームで働いているというLeonaldに、どうやって母語や文化が違う環境で、みんな活躍できているんだと疑問をぶつけてみました。すると、例えばアメリカ人はインサイトとかコンセプトを考えるのが得意、でも例えばブラジル人はクラフトが圧倒的、そんなふうにそれぞれの武器を合わせればいいんだ、チームなんだからと言っていました。
今回のアイデア「THE IMPERIAL EXCHANGE」を思いついたLauraは、価値の転換がすごかった。このアイデアを強く押したCamilaは課題の本質を見つけるスピードがすごかった。JoeyのつくったKVは、なんと、AIで動いていた。しかも、3分くらいでつくっていました。
日本に帰ったら、国境を越える自分だけの武器をつくろう、そう決心したのでした。

世界の資料づくりは、見たこともないスピード感でした。

Triple Sevenは2位に。いつか、海外賞で再会したい仲間ができました。
No, But what if?
もちろん、LIAではWorkshopだけではなく、いろいろなクリエイティブセッションがあります。その中でも強烈だったのが、PEPSICO EUのCCO、Matt Watsonさんによるセッション。ペプシのキャンペーンをつくるときに大切にしている、真っ当ではないアイデアを考えるための心構えというものでした。
例えば、「Doritos Silent」はどう生まれたのか。三角形のドリトスというタコススナックがあると思うのですが、音の出ないドリトスをつくったよというキャンペーンでした。えっ、そんなこと可能なのと、私は二度見してしまいました。
ゲーム配信者たちは、よくスナックをつまみながらゲームをしていると思うのですが、この咀嚼音が視聴者にとって不快になっていたと。そこで、ゲーム配信プラットフォームと一緒に、ドリトスの音だけノイズキャンセリングするシステムをつくってしまったというアイデア。結果、ドリトスはゲーム配信者の御用達アイテムに、ゲーム配信者のファンもドリトスのファンになっていったようです。
そんな摩訶不思議なアイデアを考えるためには、“No, But What If?”を打ち合わせで問い続ける必要があるというのです。「ゲームファンにドリトスファンになってもらうには?」「そもそも、音が出なければいいのでは?」「そんな無茶な…」「ノイズキャンセリングすればいいのでは?」といった感じです。
ビジネス課題を解決する正面突破アイデアは、時にシンプルで、無茶すぎるがゆえに考えようともしないもの。でもそれをやってのけちゃう企業姿勢に痺れて、ブランドのファンができていくのだなと感じました。

“Inspired by your brief.”
「Whopper Detour」を手がけたGabriel Schmittさんも、同じようなことを言っていました。私が大ファンなんだと伝えにいったら、裏話を教えてくれたのです。
彼はこのキャンペーンをプレゼンするECDという立場だったらしいのですが、部下からこのアイデアが上がってきた時、頭を抱えたのだそう。“WE GOT IT.”とだけ書かれたメールが届き、アイデアを聞きにいくと、とてもクライアントには提案できるはずがないと思ったと。
でも議論を重ねるうちに、たしかにバーガーキングのビジネスを動かすのはこのアイデアかもしれないと確信。勇気をもって提案しに行ったところ、「最高だ、今すぐやれ」と二つ返事でGOが出たのだそうです。結果、バーガーキングアプリはあれよあれよという間に全米ダウンロード数1位になり、多くの新規ファンも獲得。バーガーキングの大胆な姿勢に、ブランドのファンができていったのでした。
そうか、クライアントとクリエイターは、同じビジネス課題に向き合うチームなんだ。2つが結託した時、パワフルで、ファンをつくれるアイデアができるんだと改めて思いました。

思い返せば、ほとんどすべてのクリエイターが、We are Teamと節々で言っていました。
LIAで金言だと思った言葉のひとつに、“Inspired by your brief”という言葉があります。クライアントの想いから、すべてのアイデアがはじまるということ。だからこそ、チャレンジングなアイデアこそ、よく考えてくれたと、自分のことのように愛してくれる、背中を押してくれるのだと。
コピーライターの仕事は、ブランドの想いを引き出すこと。それが一番輝けるアイデアを、怖がりながら考え抜くこと。それがやがて、ブランドの強力なファンをつくっていく。いまさらかもしれませんが、ファンクリエイティブとは、ブランドのビジネスに真っ直ぐ向き合うことなんだ。そう気づくことができたのは、LIAに参加した大きな収穫でした。

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