Web Summit 2025 現地レポート #3
Microsoft、Uberなど先進企業によって現実化する「AI前提の社会・産業」:欧州最大規模のテックカンファレンス「Web Summit 2025」レポート【電通 森直樹】
Uberが語るロボットタクシーへの道
Web summitでは、自動運転やロボット等に関するセッションも多く展開されていた。
UberのPresident and COOのAndrew Macdonald氏が登壇し、自動運転が研究フェーズを超え「商用化の現実」に直面していると語った。すでに米国では、Waymo(Googleの親会社Alphabetの傘下にある自動運転技術開発企業)と共にオースティンやアトランタでの自動運転サービスの展開を拡大し、中東ではアブダビで無人運転のロボタクシーを稼働させているという。さらに、ドバイやリヤド、ドイツ、英国でも2025年中の展開を予定しているという。2025年も、残り2ヵ月を切っているというのにだ。
Macdonald氏によれば、自動運転ソフトウェアは、技術面ではほぼ実用域に達しているという。一方で、商用化には「超人的な安全性」「規制整備」「車両コストの大幅低減」「電力・インフラ確保」「高い稼働率」といった複数の要件が必要であるという。
さらにUberは、自動運転車と人間ドライバーを組み合わせる「ハイブリッドネットワーク」が重要であると持論を展開。自動運転車のみではピーク需要を捌けず、また走行できない天候や道路条件もある。そのため、自動運転車と人間の運転を組み合わせることで高い稼働率を実現するという。
同氏は、現状では車両コストが高く経済性が成立しないが、中国勢を中心に低価格化が加速しつつあり、数年以内に大きくこの産業は進展することを示唆した。筆者は、「自動運転の世界モビリティが激変する未来」でなく「商業拡張には人との共創・共存が重要」と語られたことは、意外に思いつつも、極めて欧州的な文脈だなと感心した。
Boston Dynamicsが語るAI×ロボットの現在地
レポートの最後は、世界的なロボット企業であるBoston DynamicsのCEO Robert Playter氏の講演で締めくくりたい。
ボストン・ダイナミクスは、AIがロボット制御を根本的に変えることで、「これまで自動化できなかった複雑作業においても、ロボット対応が可能になりつつある」と現在地を語った。
講演では、AIが人の行いを模倣学習する事例や、シミュレーションとモーションキャプチャを組み合わせた「動作生成」によって、ダンスや複雑な動作を短期間で習得させる事例と仕組みを紹介した。
講演では、新型の全電動ヒューマノイド「Atlas」を公開し、30kgの重量物搬送、360度可動域、バッテリー自動交換など産業用途に特化した仕様を公開した。講演では、自動車メーカーHyundaiの工場を想定し、数万台規模のヒューマンロボットが稼働する可能性を示していた。また、同社の四足歩行ロボット「Spot」による工場検査の実例が紹介され、温度・音・振動・画像データを組み合わせ、AIにより点検が拡張されている事例が紹介された。
ボストン・ダイナミクスでは、ロボティクスの普及に必要な要素として「AI」「顧客価値」「高信頼性」「安全性」の4つを挙げ、とりわけ人と同じ空間で動作するロボットにおいては安全性が最重視されると述べた。この講演では、Spot実機によるデモストレーションも行われ、会場を大いに沸かせた。
適度な距離を置こうとしても、AIが主役 ー ブランドも産業も生活もすべてAIに影響される
Web Summit 2025全体を通じて感じたことは、欧州文脈であっても、AIが最大の主役であり最も関心を持つ要素であるということだ。
もちろん、米国シリコンバレーや中国とは異なり、倫理、ガイドライン、ガバナンス、人との共創・共存などが強調され、「AI全振り感」はない。しかしながら、AIによる変革を受け入れ、AI前提の体験やモデルを構築することの重要性に言及するどころか、「それが大前提」という文脈であったと筆者は考える。そして、その取り組みを発信することが、自社のブランドレピュテーション向上に重要であると、はっきりと示しているように感じ取った。
Web summitは、ブランド・テクノロジー・イノベーションの欧州文脈を知る上で重要なイベントである。マーケターの皆さんには引き続き注目してほしいと思う。
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