CES 2026 現地レポート #01

世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」の注目トピックは? 現地ラスベガスから最速詳細レポート【電通 森直樹】

2026年テーマは「Innovators Show Up」 変革の現場に来よう!を強調


 テクノロジーと産業の現在地を示す世界最大級のテクノロジーカンファレンス「CES 2026」が、2026年1月6日から9日まで、米国ラスベガスで開催される。CESは、2025年実績で14万2465人が来場し、158の国・地域から産業界、スタートアップ、投資家、政策関係者、メディアが集結した。単なる展示会ではなく、グローバル産業の意思決定層が一堂に会する変革議論の場であることを示している。

 さて、今年のCESが掲げるテーマは「Innovators Show Up」。イノベーションは構想やスローガンではなく、現場に来て、試して、語ることで初めて前進する──そんなメッセージを込めたテーマとなっている。

 今年はAIを単なる技術ではなく、業務を自律的に支援するAgentic AI、AIと現実世界とを接続するPhysical AIの製品や産業実装が、基調講演と展示の両面で展開されそうだ。産業変革、ライフスタイル変革、そして企業の競争戦略は、これらのAIや新興技術とどう向き合い、どこまで踏み込めるのかが鍵となるだろう。

 そして「Innovators Show Up」は、イノベーションの主語を再び「行動する当事者」と強調している。「CES 2026」は、技術の進化よりも先に、イノベーターの「覚悟」が試される場であることを示唆しているのではないだろうか。現場に立ち、手触りを確かめ、他者と交わる中で輪郭を持つことで、変革の当事者になることを強調しているのだ。
  
CTAのアナリスト Brian Comiskey氏 とMelissa Harrison氏(右)
 

「CES 2026」はDigital TransformationからIntelligent Transformationへ進化させる


 現地レポートのスタートは、CTA Tech Trends to Watchからだ。CESの主催団体であるCTA(Consumer Technology Association )のアナリストによるCES見どころ紹介。毎年、多くのメディアがCTAアナリストの話を聴きに会場に詰めかける。そこでは、CESの変化のシグナルとなるキーワードが発信されることが多い。かつての「IoT(Internet of Things)」などがそれにあたる。今回のテーマは、Digital Transformationが次の段階へと移行し、Intelligent Transformationの時代であるという宣言だった。まさに、製品・企業活動・産業・ライフスタイルなど、さまざまな変革の主役が、DXからAIへと移行が起こっていると主張した。



 

CES2026はIntelligent Transformation、Longevity、Engineering Tomorrowの3つがメガトレンドに


 【Intelligent Transformation】

 冒頭で示したIntelligent Transformationは、過去20年のDigital Transformationから進化した概念として説明された。AIの高度化により、企業のオペレーション、労働者の役割、消費者の生活が変化しているとされる。その基盤要素として、セキュリティ、スケーラビリティ、シミュレーションが挙げられた。また、調査によると、AIの認知率は各国で90%以上に達し、USでは約63%の労働者が業務でAIを利用しており、平均8.7時間/週の業務削減効果が示されたという。さらに、AIはPhysical AIをはじめとして実行フェーズに入ったとして、Agentic AI、Vertical AI、Industrial AIが主要テーマとして発信されることを示した。

 また、AIを中心としたエコシステムも重要なテーマであるという。出展企業は、単体デバイス展示やプレゼンテーションではなく、システムやプラットフォームへの移行によって単一製品ではなく、デバイス、クラウド、サービスが連動するエコシステム全体を提示している。ハードウェア性能による短期的な差別化よりも、プラットフォームを通じた長期的な価値創出を重視することが産業全体の流れであると説明された。

 


 


   【QOLを追求した寿命の延長「Longevity」と生活領域】

 次にLongevityというキーワードが提示された。CTAによると、Longevityは日常生活の質(quality of life=生活の質)を長く保ち、向上させることとして位置づけられた概念だ。

 その中心となる領域として挙げられたのが、GLP-1 ecosystem(食欲や代謝に作用する医薬品を起点とした健康・生活分野全体の変化)、Precision Medicine(個人の体質やデータに基づいて最適化する医療)、Remote Care(病院の外で行う継続的な健康管理)の3つである。これらは医療の話にとどまらず、日々の生活習慣や行動そのものに影響を与える領域として紹介された。さらに、デジタルヘルスの進化は、次の3つの段階で起こるという。

 第一段階の「初期判断」。体調の変化をAIやオンライン診療で判断し、適切な対応につなげる段階である。

  第二段階の「継続管理」。ウェアラブル端末などを使い、日常的に健康状態を見守る。

 最後に第三段階として、「自己管理の強化」。個人が自分の健康データを理解し、主体的に行動できるようになる段階だ。

  Longevityは医療だけでなく、住まい、働き方、日常生活全体を支える基盤として広がるテーマだと主張した。



 
 【産業と社会インフラの再設計「Engineering Tomorrow」】

 三つ目のメガトレンドとしてEngineering Tomorrowは、テクノロジーを単なる製品や効率化の手段ではなく、移動・建設・農業・エネルギーといった社会基盤そのものを再設計する手段として捉えるフェーズに入っているということだ。

 自動車分野において車は、SDV(Software Defined Vehicle)としてのプラットフォームへ移行し、継続的なアップデートやパーソナライズが前提となっていることが説明された。建設や農業では、自律化・AI活用が紹介され、作業の安全性や生産性向上に加え、資源効率の改善が進んでいるとされた。

 さらにエネルギー分野では、電動化、スマートグリッド、水素、次世代原子力、さらには初期段階の核融合まで取り上げるという。

 「CES 2026」は、AIの実装が人々や産業にどのような影響を与えるかではなく、どのように実装され、どのような具体的な場面で価値を変えられているのか、が示される場となりそうだ。まさに、「Innovators Show Up」にふさわしい場となることが、Tech Trends to Watchから予感された。
 

Unveiledでは日本の大企業も奮闘


 Media day初日の1月4日は、メディアに向けた最新技術の先行発表イベントである「Unveiled」が開催される。今年は世界中の企業の中で、日本の大手企業の次世代技術も注目を集めていたので、紹介したい。



 
  
会場の様子。来場者はメディア参加(記者・ジャーナリストや有力ブロガーなど)オンリーだが、かなり賑わっている



   DIC(旧:大日本インキ化学工業)は、全方位マルチコプター「HAGAMOSphere」や、カメラや外部センサに頼らず対象物を認識するロボットフィンガー「MoR」、人の指では感じ取れない微細な凹凸や傷を検知できる触覚拡張ツール 「Tacthancer」などを出展した。筆者もTacthancerを試したところ、指では感じ取れない傷が、このデバイスを装着するだけで触覚的に感じ取ることができる不思議な体験をした。製品テストやメンテなど、多くの用途が見込めるという。
 


   自動車用の先端ガラス素材の製品展示をしたのはAGC。最近普及しつつある自動車のヘッドアップディスプレイの、サングラスをすると視認性が急激に落ちるという課題に対して、新しいヘッドアップディスプレイ用のガラス素材を展示。その他にも完成車メーカー向けの新素材・ソリューションを紹介していた。
   
森 直樹 氏
株式会社電通
ビジネストランスフォーメーション・クリエイティブセンター
エクスペリエンス・デザイン部長/クリエイティブディレクター

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。2023年まで公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)を務める。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。CESでは、ライフワークとして各種メディアに10年以上の寄稿経験がある。

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