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海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #01

多くの人が賛成しない大切な真実に、明日の「アジェンダ」がある

 

マーケティングの「いま」とは何か

「多くの人が賛成しない大切な真実とは何か」
 

ピーター・ティール(PayPalの創業者)


 時事的な話題とは、ビジネスに限らず「いま起こっていること」、すなわち現在に注目することである。特にマーケティングは、「いま」に囚われていると言ってもいい。そして、それは絶え間なく変化し、常に誰かの意見に左右されてきた。21世紀の現在であれば、それはテクノロジーによって変化が加速される世界である。

 たとえば数年前まで、GoogleやFacebookなどのテクノロジー企業がもたらすデジタル化の波によって「ビッグデータ」がもてはやされ、起こりうるポジティブな変革がまことしやかに語られていた。しかし、その様子はあっという間に変わってしまった。

 英国におけるYouTube上の反社会的団体のコンテンツへの広告掲載問題に始まり、欧州の「GDPR(一般データ保護規則)」の強化、米国の大統領選への露の介入に関するFacebookに対する疑念など、世の中は手のひらを返したようにテクノロジーの不透明な面について声を荒げはじめた。

 デジタル広告は「知らないうちに自分の情報が勝手に利用され、追いかけまわされるもの」であり、それをグローバル規模で展開して利益を得ているのがシリコンバレーの企業群である、と見なされるようになった。これがマーケティングの現在である。
 

不可避な変化にも、抵抗する人々が現れる

 もちろん、「このような懸念は一時的なものである」と、楽観視するのもひとつの見方である。たしかにテクノロジーの進化による恩恵は大きく、知らないうちに大きな影響力を持ちつつある。スマートフォンにタッチするだけで、簡単に欲しいものが自宅に届くAmazonの便利さを誰も否定できないように。

 また同時に、これらの現象がゆっくりと、確実にもたらす、社会や人々への変化について冷静に現実的に考えるのも、もうひとつの見方である。『WIRED』創刊編集長のケヴィン・ケリーは、それを「避けられないもの(inevitable)」と呼んだ。
 
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ケヴィン・ケリーは「未来」を渓谷に降り注ぐ雨に例えた。その水滴がどの経路で谷底にたどり着くかは予想できないが、「下に向かって流れていく」という方向は不可避であり、その方向性を予見できるとした。

 ケリーによれば、いま変化しているものは、その過程に過ぎず、すべては「なっていく(Becoming)」ものなのだ。変化に抵抗すること自体も、産業革命時のラッダイト運動よろしく、ひとつの過程に過ぎない。

 そして自分を含めて、特にデジタルマーケティング業界に生きる者にとっては、テクノロジーの変化に対抗する人々の反応が、無知からくるものだろうが、嫌悪からくるものだろうが、もしくは世間体からくるものだろうが、障害になることがある。

 それによって次の進歩が遅れるだけでなく、意味のない大量のコストを生み、それがまた新たな障害になることに苛立つに違いない。たとえ、それ自体が不可避だったとしても。
 
 

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