「ADFEST」萩原幸也氏レポート #6
アジアを代表する広告祭「アドフェスト2026」 ハイネケンも語った「人間の本質」に立ち戻る重要性【リクルート 萩原幸也氏】
“When People Become the Brief Again”
次に、スピーカー・セッションの様子をお届けします。
ちなみにステージは2つあり、プログラムが並行して進みます。メインステージでは日本語の同時通訳が入りますので、英語に不安がある人でも安心です。
メインステージのセッションは全て聴きましたが、そのほとんどが「Human+」に則して展開され、広告主、媒体、エージェンシー、プロダクションなど様々な立場のスピーカーの視点から展開されましたが、多くの結論は、AIの活用が当たり前になった今こそ「人間中心」に考えようという内容だったように感じます。それを感じていただくのに、印象的だった2つのセッションを取り上げたいと思います。
『When People Become the Brief Again』
<スピーカー>- Warunyoo “Big” Sorasetsakoon
Executive Creative Director, BBDO Bangkok, Bangkok - Prasit “Pop” Kunanuphanchai
Chief Strategy Officer, BBDO Bangkok, Bangkok

「再び『人』をブリーフの中心に据えるとき」というタイトルの、BBDOバンコクによるセッションです。ダッシュボード、フォーマット、KPIに埋もれがちなマーケティング業界において、クリエイティブの制作におけるブリーフの中心は「人」であるべきだとし、これまでいかにマーケティングが「人間の本質」から遠ざかってきたか、そしていかにしてそれを取り戻すかを論じました。
その中で、KPI(Key Performance Indicators)だけではなく、KHI(Key HUMAN Indicators)を設定するべきだという提案がありました。広告を一般的なKPI、つまり「配信効率や到達量」だけではなく、KHI、「人がどう感じ、どう受け取ったか」を合わせて測るべきだとしました。

Viewability、Reach、Like、Bought SOVに対して、Replayability、Laugh、Goosebum Rate、Earned SOVを並べ、広告がどれだけ出たかではなく、どれだけもう一度見たくなり、笑いが起き、鳥肌が立ち、自発的に語られたかを見るべきだと語っていました。広告主の立場としては非常に納得しつつ、どうしたら実現できるかと宿題をもらった気持ちになりました。
「How Creativity Can Spark Real-World Connections」
<スピーカー>- Stephan Schwarz
Executive Creative Director, LePub Singapore - SJ Heng
Senior Director, Commerce, Heineken Asia-Pacific

ブランドがどうすれば「本物の人間関係」を生み出せるのかを問うセッションでした。Publicis Groupe傘下のクリエイティブ・エージェンシー LePubと、Heinekenのアジア太平洋シニアディレクターから、事例を通じて、広告は単に商品を売るための装置ではなく、人が集まり、会話し、共有体験を持つきっかけを設計するものになれると提示がありました。
「人を動かす前に、人をつなげる」という発想により、第一に「ブランドが意味を持って介入できる文化的な緊張を見つけること」、第二に「都市生活のなかで共有体験や交流の場を育てること」、第三に「グローバルブランドの一貫性を保ちながら各エリアのもつ文脈に合わせ、文化の中に自然に入っていくこと」を提示。ブランドの役割をメッセージを一方的に届けることではなく、参加できる関係性をデザインすることと語りました。

この考え方を理解するうえで分かりやすい事例が、Heinekenの「Rooftop Revival」という施策です。これはソウルで起きている、近くにいるのに孤立している「近接性のパラドックス」の状態に着目し、使われていない屋上を交流の場へと変えた施策です。「仕事や生産性のために設計された都市」を、つながりのための空間へと読み替える試みだと説明しています。ちなみに、この屋上は元々ブランドカラーの緑色が多かったということで、星のパラソルを置くことでジャックしている鮮やかさもあります。
Heineken | Rooftop Revival
他にもいくつかの事例を紹介していましたが、Heinekenのパーパスにもある「True togetherness(真の一体感)」を体現している施策に感服しました。
というところで、話は少し変わりますが、2026年6月2日から4日にかけて開催されるマーケティングカンファレンス「マーケティングアジェンダ2026」にて、若手クリエイターが企画案を競い合うコンペティション「ヤング・クリエイティブ・アジェンダ2026」が実施されますが、今回の課題提供企業はハイネケン・ジャパンです。私は僭越ながら審査員長として関わりますので非常に楽しみです。
ヤング・クリエイティブ・アジェンダの話が出ました。もう一つ、2年前の課題はブラックサンダーでしたが、その際グランプリを受賞し、その後実際にローンチした施策「HAVE A POSITIVE BREAK」がDIGITAL & SOCIAL LOTUSでブロンズを受賞していました。我が事のように嬉しいです。おめでとうございます!
ということで、次の記事では海外からの受賞作をいくつかご紹介したいと思います。
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