【リレー連載】アジア市場を攻略するローカルインサイトとナラティブ戦略 #1
ポカリスエット・キシリトールガムに見る、激動のアジア市場攻略の鍵は「ナラティブ」【リレー連載Vol.01 本田哲也氏】
2026/04/27
PR Collective Asiaが生まれた理由
ではなぜ、アジア市場におけるPR戦略の専門家組織「PR Collective Asia」の構築に至ったのか。感じていた課題は、構造的なものだ。
日本本社は全体予算を持ちながらも、各国のコミュニケーションを横断的に管理する仕組みが整えられていない。結果として、現地法人は限られた予算の中で動くことを求められ、全体戦略が明確でないまま現地パートナーに委託する。そして現地パートナーは小規模な予算で部分最適なソリューションを提供するにとどまり、課題解決につながる成果が生まれにくい。この三者がうまく噛み合わないまま、単発かつ小規模な仕事が繰り返されているのが実態だ。
必要なのは「循環」である。日本本社の経営者や事業責任者と対話をし、ローカルの社会インサイトを踏まえた全体戦略を立て、現地のプレイヤーへとつないでいく。その循環を生み出すために立ち上げたのが「PR Collective Asia」である。
現在、世界各地で多様な分野の専門家が集い、課題解決に取り組む「コレクティブ・アプローチ」が活発化している。組織に帰属するのではなく、高度な専門性を備えた個人が緩やかにネットワークして機動的に動くのは、この時代に相応しいあり方だ。PRは本質的に属人性の高い領域である。そして、特定の国や市場に対する深い理解も、企業という枠組み以上に個々人の知見に依拠する部分が大きい。こうした考えのもと、日本企業の進出が著しいシンガポール・タイ・インドネシア・ベトナム・マレーシア・フィリピンの6ヵ国の経験豊富なPRストラテジストを厳選して、ネットワークを構築した。
「PR Collective Asia」を組織するにあたって、過去2年ほどの間に自ら各国を回り、100人ほどのPRプロフェッショナルとお会いした。ネット上の情報では分からない、生のレピュテーションを確かめるための、泥臭い作業だった。
選定基準は3つ。ひとつはPRに20~30年携わるベテランであること。2つ目は、グローバルPR会社でのマネジメント経験など、その国のことをよく知りながら、他の国籍・文化の人とも仕事をした経験を持つこと。ローカルの知見だけでは、日本企業が求めるグローバルな視座には応えられない。3つ目は、マーケティングPR、企業広報、危機管理など、多岐にわたる領域を担当した経験があること。そうして見出したのが各国を担う6人のPRストラテジストである。
日本企業の支援は、まず本田事務所が窓口として受け、案件ごとに各国のPRストラテジストと協力していく体制をとる。私自身も含めた7人の専門家で、日本企業のアジアでの成功を戦略的に支援していく。
発足に伴い、6月1日(月)13時~16時、大手町三井ホールにてビジネスカンファレンス「Asia Insight 2026」(「アジェンダノート」が特別協力)を開催する。日本企業のアジアビジネスの最前線と未来戦略をテーマに、日本企業およびASEANのPR専門家の双方の視点から徹底的に議論する場となる。
また本連載は、次回以降、6ヵ国の経験豊富なPRストラテジストがリレー形式で執筆する。これまでに自身が支援したPR・コミュニケーション戦略を振り返りながら、各国の文化・宗教・商習慣・メディア構造といったローカルインサイトの特徴を紹介し、日本企業のアジア市場進出におけるポイントを探っていく。

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