Spikes Asia
PRとはブランドが「何かを言う」ことではなく「居場所を設計する」こと ー Spikes Asia 2026 審査の現場より【シナジア 田上智子氏】
2026/05/13
アジア太平洋地域における高いクリエイティビティを讃えることを目的に開催されているアジア地域最大の広告・コミュニケーションフェスティバル「Spikes Asia(スパイクス・アジア)」。ヨーロッパのEurobest(ユーロベスト)、中東のDubai Lynx(ドバイリンクス)と並び、カンヌライオンズの地域版フェスティバルとして知られている。今年で40回目の開催を迎えたSpikes Asia 2026は、3月9日~13日にかけてシンガポールで開催された。今年は全25部門で構成されるアワードに2,544のエントリーがあり、Creative Effectivenesss部門の日本マクドナルド、Creative Strategy部門のゼスプリ インターナショナル ジャパンなど、日本勢が5部門でグランプリを獲得する活躍を見せた。
本アワードの審査を通じて見えてきた「これからのブランドの振る舞い」について、PR部門の審査委員長を務めたシナジア 代表の田上智子氏が、前後編に渡ってレポートする。
本アワードの審査を通じて見えてきた「これからのブランドの振る舞い」について、PR部門の審査委員長を務めたシナジア 代表の田上智子氏が、前後編に渡ってレポートする。
審査員室という特等席から見えた「これからのブランドの振る舞い」についての気づき
アジェンダノート読者の皆さま、田上智子と申します。P&Gや資生堂などの事業会社で約30年、マーケティングやコミュニケーションに従事した後、社会発想で事業成長を支援するコンサルティング会社、株式会社シナジアを創業して2年目になります。

田上智子
シナジア 代表取締役
東京大学卒業後、P&G日本法人入社。日本支社・アジア本社(シンガポール)において、ブランドマネジメント・ブランドPR・企業広報に従事。勤続25年を機に退社。株式会社資生堂 チーフコーポレートコミュニケーションオフィサー(執行役員級)などを経て、2024年9月に(株)シナジアを創業。社会発想のコミュニケーションで事業成長をデザインしている。
2019~21年、24年~ 日本PRアワード審査員/25年~審査委員長
2024年 カンヌライオンズ PR部門審査員
2026年 スパイクスアジア PR部門審査委員長
2026年ACC マーケティングエフェクティブ部門審査員
シナジア 代表取締役
東京大学卒業後、P&G日本法人入社。日本支社・アジア本社(シンガポール)において、ブランドマネジメント・ブランドPR・企業広報に従事。勤続25年を機に退社。株式会社資生堂 チーフコーポレートコミュニケーションオフィサー(執行役員級)などを経て、2024年9月に(株)シナジアを創業。社会発想のコミュニケーションで事業成長をデザインしている。
2019~21年、24年~ 日本PRアワード審査員/25年~審査委員長
2024年 カンヌライオンズ PR部門審査員
2026年 スパイクスアジア PR部門審査委員長
2026年ACC マーケティングエフェクティブ部門審査員
アジア太平洋地域のクリエイティビティを象徴する「Spikes Asia 2026」。今回、私はPR部門の審査委員長という大役を仰せつかりました。事前の在宅審査から、現地での2日間部屋にこもり、国籍も専門性も異なる審査員たちと100件以上のケース審査を行いました。また審査3日目には、全部門の審査委員長が集まり、「Glass」「Integrated」「Grand Prix for Good」の3部門を共同審査しました。
各部門の委員長はそれぞれ異なる専門領域の「軸」を持っています。包括的かつ多層的な議論は、PRの枠を越えたクリエイティブの本質に触れる、非常に興味深く深い体験となりました。そこで得た体験は、私自身のPR観、そしてコミュニケーションの捉え方をアップデートする、発見の連続でした。
本稿では、審査員室という特等席から見えた「これからのブランドの振る舞い」についての私の気づきを、マーケティングに携わる皆さんと共有させていただければと思います。
議論の拠り所としての「北極星」
審査委員長の仕事は、現地での議論をまとめるだけではありません。会期の数ヵ月前から始まるオンラインでの事前審査を通じ、APAC中に散らばる審査員たちとエンゲージメントを高め、共通の熱量を持って現地に集まれるよう準備を整えることから始まります。
現地審査の冒頭、私たちはひとつの大きな問いに直面しました。「現代において、PRらしいクリエイティビティとは何か?」という問いです。Spikes Asiaには25の部門があります。その中で、PR Spikesらしいアワードリストにすべく、評価軸を議論することから始めました。
議論の冒頭、私たちはPRの本質を「Earned at the Core(アーンドを中心とした設計)」と定義。その上で、以下の4点を必須項目として合意しました。
- Earned Impact:社会に対してどのような実質的影響を生んだか。
- Cultural Context:該当地域の文化的文脈をいかに深く読み解いているか。
- Gravity of the Idea:アイデアそのものが人々を惹きつける強い「引力」を持っているか。
- Multistakeholder:多様なステークホルダーを巻き込み、共鳴を生んでいるか。
さらに、業界の基準を引き上げるために、「Wise Bravery(賢明な勇気)」と「Creative Ambition(クリエイティブへの野心)」の2点を加えるという総意をまとめました。
これらを議論の最中にいつでも振り返ることができるよう、その場で紙に書いて壁に貼り出し、議論の「北極星」としました。これにより、単なる主観的な「好き嫌い」を排し、「PR部門らしさがあるか」という共通軸で議論を結実させることができたのです。
PR Spikesの審査員。議論の「北極星」を紙に書き、壁に貼り出した。




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