【リレー連載】アジア市場を攻略するローカルインサイトとナラティブ戦略 #02
ユニクロ・ネスレが好例「シンガポールと共に成長する」ブランドへの進化とナラティブ【リレー連載Vol.02 シンガポール】
2026/05/20
アジア市場は、日本企業の今後の成長を左右する最重要エリアのひとつである。しかしその一方で、アジア各国の市場環境は、たとえ隣国であっても大きく異なり、文化的・社会的背景の多様性が日本企業の進出における高い障壁となっている。こうした状況を踏まえて発足したのが、シンガポール・タイ・インドネシア・ ベトナム・マレーシア・フィリピンの6ヵ国を代表するPRストラテジストが結集し、日本企業のアジア進出を支援するコレクティブネットワーク(専門家組織)「PR Collective Asia」である。
参考:アジア市場におけるPR戦略の専門家組織「PR Collective Asia」発足
本連載は、PR Collective Asiaを構成するPRストラテジストによるリレー形式で展開する。各執筆者がこれまで手がけてきたコミュニケーション戦略を振り返りながら、各国の文化・宗教・商習慣・メディア構造といった特徴を紹介する。2回目となる今回は、APACにおいて「信頼される地域統括拠点」としての地位を確立しているシンガポールに注目する。
執筆を担当するのは、アジア太平洋と米国において約30年にわたってレピュテーション・危機管理、組織改革を専門としてきたPRストラテジスト イヴォン・コー氏。日本企業が、従来の「控えめで製品重視」の戦略から「見えるリーダー」として存在感を示すアプローチへと転換する必要性について論じる。
参考:アジア市場におけるPR戦略の専門家組織「PR Collective Asia」発足
本連載は、PR Collective Asiaを構成するPRストラテジストによるリレー形式で展開する。各執筆者がこれまで手がけてきたコミュニケーション戦略を振り返りながら、各国の文化・宗教・商習慣・メディア構造といった特徴を紹介する。2回目となる今回は、APACにおいて「信頼される地域統括拠点」としての地位を確立しているシンガポールに注目する。
執筆を担当するのは、アジア太平洋と米国において約30年にわたってレピュテーション・危機管理、組織改革を専門としてきたPRストラテジスト イヴォン・コー氏。日本企業が、従来の「控えめで製品重視」の戦略から「見えるリーダー」として存在感を示すアプローチへと転換する必要性について論じる。
日本企業は「静かな卓越性」から「見えるリーダーシップ」へ
長年にわたり、日本企業は品質、安全性、そして長期的なパートナーシップによって、シンガポールにおいて厚い信頼を築いてきた。
しかし、価値観重視でイノベーション志向が強まり、常に声を上げる消費者によって形作られる現在の市場においては、「静かな卓越性」だけでは十分とは言えない。日本企業は、現地の研究開発やコミュニティ、人材への投資を通じて、「見えるリーダー」として存在感を示す必要がある。
<執筆者>

Yvonne Koh イヴォン・コー
Saeloun Asia 創業者兼マネージングディレクター
アジア太平洋と米国において約30年にわたり、レピュテーション・危機管理、組織改革を専門とするPRストラテジスト。エデルマンやMSL Groupといった世界的なPR会社でリーダーを歴任。PayPal ではアジア太平洋地域コミュニケーション・ディレクターとして、域内全市場を統括する広報体制の構築を主導。インド洋大津波発生時には、スリランカ観光局の危機管理広報を指揮し、世界14市場における観光復興プロジェクトを成功に導く。アジア系組織への助言において深い知見を持ち、AVPN、AIA、シンガポール国家遺産庁、ハイアールなど、アジアでのPR支援実績多数。
Saeloun Asia 創業者兼マネージングディレクター
アジア太平洋と米国において約30年にわたり、レピュテーション・危機管理、組織改革を専門とするPRストラテジスト。エデルマンやMSL Groupといった世界的なPR会社でリーダーを歴任。PayPal ではアジア太平洋地域コミュニケーション・ディレクターとして、域内全市場を統括する広報体制の構築を主導。インド洋大津波発生時には、スリランカ観光局の危機管理広報を指揮し、世界14市場における観光復興プロジェクトを成功に導く。アジア系組織への助言において深い知見を持ち、AVPN、AIA、シンガポール国家遺産庁、ハイアールなど、アジアでのPR支援実績多数。
より要求水準の高まるシンガポール
シンガポールにおいて、従来の「控えめで製品重視」の戦略が通用しにくくなっている背景には、3つの構造的変化がある。
第一に、シンガポールは「信頼される地域統括拠点」としての地位を確立していること。政府機関や投資家は、多国籍企業に対し、単に東京での意思決定を実行する支社ではなく、意思決定・イノベーション・人材育成の中核機能をシンガポールに置くことを求めている。
第二に、コーポレートガバナンス、サステナビリティ、社会的インパクトに対する監視が強まっていること。規制当局、メディア、従業員はいずれも、業績だけでなく企業の行動や価値観に注目し、透明性、説明責任、そして「グリーンプラン」(編集部注:「シンガポール・グリーンプラン2030」。2021年2月に発表された、持続可能な開発、二酸化炭素の正味ゼロ排出、グリーン経済に向けた政策)やデジタル化といった国家的優先事項との整合性を求めている。
第三に、より若く、発言力のある労働力が、目的意識、柔軟性、包摂性を重視し、不透明で過度に階層的な企業文化に対して積極的に異議を唱えるようになっていること。このような環境下で成功する企業は、オペレーションの信頼性に加え、明確なローカルナラティブ、積極的なステークホルダーエンゲージメント、人材への目に見えるコミットメントを兼ね備えている。
こうした構造的変化を踏まえ、日本企業はどのように「見えるリーダー」として存在感を示していけばいいだろうか。2つの例を挙げて説明したい。
ユニクロ:日本ブランドのローカライズ
ユニクロのシンガポールにおける展開は、日本企業にとって有益な参考事例といえるだろう。単に東京の店舗モデルを輸出するのではなく、オーチャード・セントラルのグローバル旗艦店をはじめとする店舗を、グローバルなLifeWearコレクションとともに、現地の創造性や文化を発信する場として活用している。
さらに重要なのは、LifeWearのコンセプトを商業の枠を超えてコミュニティへと拡張している点だ。「Neighbours Helping Neighbours(NHN)」プログラムでは、使用済みのユニクロ衣料を回収・再生し、地域の社会福祉団体やファミリーサービスセンターを通じて再配布している。これにより、低所得世帯に質の高い衣料と「選択の尊厳」の提供が実現している。
この取り組みは、LifeWearを単なる衣料ではなく、「尊厳」「サステナビリティ」「コミュニティとのつながり」を体現するプラットフォームへと昇華させている。グローバルブランドをローカル価値に根付かせ、SNS上で共感を呼ぶストーリーを創出し、現地パートナーやチームが社会課題に即した取り組みを共創しているのだ。
A Community of Neighbours Helping Neighbours | UNIQLO Singapore
多くの日本企業にとって、このようなコミュニティ中心のイノベーションはピンと来ないかもしれないが、「信頼される存在」から「選ばれる存在」へと進化するためには不可欠なことだろう。




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