カンヌライオンズ2026

カンヌライオンズ2026 受賞作の傾向「伝えて動かそうとするな、参加型で気持ちを動かせ!」

 さて、カンヌライオンズ2026から帰国してしばらく経った7月11日に、この記事を執筆しています。僕のカンヌレポートでは、毎年その年の受賞作の傾向・ポイントを3-4つ挙げて紹介しています。 今回は、3つ目の傾向である「伝えて動かそうとするな、参加型で気持ちを動かせ!」と、実際の受賞事例についてご紹介していきましょう。
 

ブランドらしい文脈で、生活者のアクションを引き出す


 前々回前回の速報記事では、傾向の1つ目として「“枠からはみ出せ”は、さらに”枠から考え始めるな“へ」を、2つ目として「世の中に目を凝らして、使えそうなものをピックアップ!」を挙げました。
  
贈賞式後に参加者たちでごった返す、赤絨毯階段。

受賞作のテーマであるライムを手に記念撮影する受賞者たち。

会社やネットワークごとの表彰では、相当に多数の人が登壇。

シルバーとブロンズの受賞者は、その場で起立を求められ、会場中から惜しみない拍手が。

 そして、今回紹介する3つ目の傾向は「伝えて動かそうとするな、参加型で気持ちを動かせ!」です。言い換えれば、「説得」から「場の提供」へ。ブランド自らが、一種のプラットフォームをつくるようなやり方とも言えるでしょう。

 その典型的な事例は、ソーシャル&クリエイター部門のグランプリを獲得した、ハイネケンの「Could Have been a Heineken(ハイネケン、飲めたかもよ)」です。

※なお、紹介する事例のそれぞれは、僕が挙げる傾向のひとつだけではなく、いくつかにまたがって具現化している例も少なくないのでご承知おきください。
 
ハイネケン「Could have been a Heineken」

 この事例で、ハイネケンは、人々の間に拡がる「音声メッセージのやり取り」に目をつけます。海外では主流となっているWhatsAppというアプリでは、全世界で1日に90億件以上の音声メッセージが送信されているといいます。

 さらに、その音声メッセージは長くなる傾向にあり、つまりは人々がそうした音声メッセージを聞くことに多くの時間を費やしていることが示唆されます。1年間に150時間も音声メッセージを聞くことに費やしているというデータもあり、そのことは、現実世界でのリアルな交流の貧弱化にもつながっていそうです。

 そうした現実に対してハイネケンが伝えたかったのは、こういうことです。「長時間の音声メッセージのやり取りを減らして、ハイネケンを飲みながら、リアルで交流しようよ!」。マス広告全盛の頃のマーケティング・コミュニケーションの作法であれば、このメッセージをいかに伝わる広告コピーに変換し、効果的なビジュアルとともに生活者に届けようか、と考えたはずです。

 たとえば、「音声メッセージより、会って話そう。そしてそこに、ハイネケン。」とか「会って飲んで話すシアワセ。ハイネケン。」といった表現を(もっと練り込むにしても)開発して、一生懸命に伝えようとしたわけです。

 しかしここでハイネケンが実施したのは、生活者が参加できる場=ある種のプラットフォームをつくることでした。具体的には、3分以上の長い音声メッセージのデータを、ハイネケンが設けたWhatsAppアプリ上の「音声とビール交換bot」に送信すると、無料でハイネケンが飲めるクーポンをゲットでき、そのクーポンが使用可能な近隣のバーの紹介も行われました。

 つまり、「このハイネケン無料クーポンで、友人とリアルに会って、飲みながら話そうよ」というメッセージを、生活者が音声メッセージを送信するという場、参加可能なプラットフォームをつくることで、みごとに届けたのです。

 このキャンペーン自体の告知は、巨大な屋外スペースやデジタルサイネージ、電車の車体広告などで、音声メッセージをビジュアル化した特徴的な表現で繰り広げられ、筆者にはなかなか斬新に感じられました。
   
ビーチ沿いにはカンヌライオンズ公式のスペースが多数。

ビーチ沿いスペースのひとつ。テック系企業の出展が多い。

 もうひとつ、PR部門のグランプリを受賞したキットカットの「Heist(強盗)」も、生活者の参加を促す場=プラットフォームをつくり出すことで、大きな反響のあるキャンペーンとなりました。
 
キットカット「Heist」

 簡単にご紹介しておくと、輸送中のキットカット12トンが盗まれる事件が発生したことを受けて、ブランド側はすぐに「キットカット追跡装置」という場・プラットフォームを開発。生活者が自分の持っているキットカットのパッケージに記載されている8桁のシリアルナンバーを入力すると、その製品が盗難品かどうかを判別できるようにしました。

 いわばユーザーに「捜査への協力」を呼びかけたわけで、多くのユーザーが参加し、その結果についてSNSでシェアしました。こうして、ユーザーの参加を促して成功したことで、多くのメディアに取り上げられたと言います。こちらも参加可能な場をつくったことで、ユーザーの気持ちを動かせた事例と言えるでしょう。

 さて、このカンヌライオンズ2026の速報レポートもあと1回を残すのみとなりました。最後の第4回も、なるべく早いタイミングで皆さんにお届けするつもりですので、楽しみにお待ちください!
    
沖合に停泊する、巨大客船。

贈賞式後の遅い時間から開催された、日本企業主催の懇親パーティ。

今年のカンヌは暑かった。無料の水を配って歩くサービスも。

カンヌは、アジア料理のお店も多い。

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