カンヌライオンズ2026
カンヌで確信したAI時代のブランドに必要な「3つの覚悟」 マーケター杉野恵美氏 カンヌライオンズ2026レポート
2026/07/21
カンヌはアツかった
カンヌは、東京より暑かった。海沿いで風があるとはいえ、気温は6月で既に30度越え。冷房のある室内でないと、たちまち汗だくになり滝汗をかくほどでした。
広告会社10年、事業会社9年。その両方のフィールドでブランディング&コミュニケーションに携わってきた私にとって、カンヌライオンズは、知的好奇心の刺激が多いまさにアツい時間でした。

杉野 恵美 氏
12年間、外資系広告会社にてロサンゼルス・ニューヨーク・サンパウロ・東京を拠点に、多様な業種のブランドコミュニケーションに従事。グローバルマーケティング戦略のLocalizationやブランディングを強みとなり、ドミノ・ピザでは、広報含めたコミュニケーション全般を統括。 商品開発から関わり数々のヒット商品をロンチし、国内宅配ピザNo.1に貢献。 2019年からAmerican Expressにてリブランディング / 若年層コミュニケーションを行い、Z世代・ミレニアル世代の獲得に成功。2024年にベンチャー企業のTENTIALにマーケティング部門責任者として参画。2026年に独立。
12年間、外資系広告会社にてロサンゼルス・ニューヨーク・サンパウロ・東京を拠点に、多様な業種のブランドコミュニケーションに従事。グローバルマーケティング戦略のLocalizationやブランディングを強みとなり、ドミノ・ピザでは、広報含めたコミュニケーション全般を統括。 商品開発から関わり数々のヒット商品をロンチし、国内宅配ピザNo.1に貢献。 2019年からAmerican Expressにてリブランディング / 若年層コミュニケーションを行い、Z世代・ミレニアル世代の獲得に成功。2024年にベンチャー企業のTENTIALにマーケティング部門責任者として参画。2026年に独立。
ここ数年、AIの進化から、テクニック的な内容のインプットが多かったように感じます。さらに、英語圏は日本よりはるかに進化が早く、AIエージェントだけが書き込んでいるmoltbookでは、32,000のコミュニティと350万投稿が作成され、英語という共通言語の力で猛スピードで知能学習が行われています。
そんな時代にグローバルブランドのリーダーたちから何が語られるのかワクワクしながら、期間中23個のセミナーやオフィシャルツアーに参加しました。
その中で、個人的にトップクラスに感銘を受けたのが、Estée Lauder x MetaとPatagoniaの2つのプレゼンテーションでした。一見、美容とアウトドアという全く異なるブランドのプレゼンテーションは、それぞれ別日に開催され、トピックも違う内容だったのですが、後から何度も思い出し、思考が刺激され、私の解釈の中に共通項が浮かび上がったので、ここでレポートさせていただきます。

Estée Lauder:ブランドアイコンの美学をAIで解剖
セッション情報
タイトル:The Anatomy of an Icon
登壇者:Aude Gandon / The Estée Lauder Companies / Chief Digital & Marketing Officer
Nicola Mendelsohn / Meta / Head of Global Business Group
Estée Lauderのプレゼンテーションは「The Anatomy of an Icon(アイコンの解剖学)」と題され、Metaとの共同研究によって、ヘリテージブランドが持つ「永遠性」のエッセンスをAIで解読するという新しい分析手法でした。
ブランドが真のアイコンとして持続するための指標を、以下の5つで分析しているとのこと。
- Emotional Territory (感情の所有):10年、30年と、顧客に同じ感情を提供し続けているか。
- Distinctive Systems(即時的認知):ロゴがなくても、ボトルの形状や使用時のリチュアル(儀式)で識別できるか。
※リチュアルという単語は何度も出て、ただのパッケージやコミュニケーションだけの話ではなく、ブランドとして大事にしているのが伝わってきました。 - Community Participation(コミュニティ参加):ブランドが語るのではなく、顧客が主体的に語り合っているか。
- Cultural Adaptation(文化的適応力): 魂を失わずに、新しい時代へ適応できているか。
- Rediscovery Loops(再発見): 新世代が「自分だけがこれを発見した」と感じられる余白があるか。
※only me=自分「だけ」を強調していました。

ここで興味深かったのは、「5つの軸すべてで満点を取る、完璧な五角形を目指さない」というブランドの姿勢です。 長年市場を牽引するロングセラー製品は、実はいびつであるという共通点があるとのこと。
特定の次元だけで圧倒的に突出し、他は意図的にスコアを低く保つ。たとえば、あえてブランド側が沈黙し、情報の露出を絞ることで、顧客自身に独自の意味を見つけさせる余白を残すなど、この「不完全さを肯定する設計」が老舗の化粧品ブランドから聞けたのは新鮮でした。単純なデジタルマーケティングとしてKPIに溺れず、KPIはブランドが設定するものという意志と貫禄を感じます。
Metaと共同開発したAIを「感情のパターンを可視化する道具」として完全に割り切っています。「アドバンス ナイト リペア」の成分は時代とともに進化しても、茶色いボトルと夜のリチュアルだけは守り抜く。そういった直感的な過去の正しい意思決定を、AIがデータとして裏付けたとのこと。

そして、最後に「どの文脈を選び取り、どう顧客の感情に触れるかは、永遠に人間の領域である」と言い切りました。創業者エスティ・ローダー女史が残した、「Touch your customer and you're halfway there(顧客に触れなさい。そうすれば、道は半分開かれたも同然)」という言葉の通り、データに溺れず、ブランド・エクイティの核を人間が握り続けるという信念があるからこそ、AIの役割を明確にすることで、最先端のAIでの分析まで行き着けるのではと感じました。






メルマガ登録















