カンヌライオンズ2026

資生堂 クリエイティブ専門のPRパーソンが振り返るカンヌ2026「インハウスクリエイティブ組織を有する企業こそカンヌに着目すべき」

 

クリエイティブに関わる人のあたたかさ




 カンヌライオンズ初参加だったこともあり、「現地でしかできない体験を優先しよう」とチームで事前に決めていました。

 結果、昼はセミナーやInside the Jury Room(各部門の審査員講評)、夜は表彰式や日本企業ハウスへのご挨拶と交流など全力で動き回り、滞在期間中の平均歩数は1日16,800歩を記録しました!

 思わず尻込みしてしまうような各界のレジェンドの皆さまと対話や議論ができる環境にも衝撃を受けましたし、カンヌベテランの皆さまからは作品や応募に関するアドバイスもいただくことができました。

 さらにInside the Jury Roomの後に勇気を出して審査員に話しかけにいったところ、その場で急遽「BEST AFTER 2055」をプレゼンする機会にも恵まれ、直接フィードバックをいただけたことも今後につながる大きな収穫でした。

 これらの経験を通じて感じたのは「クリエイティブに関わる人は、優しくてあたたかい」ということです。クリエイティブに関わる方々の根底に共通する真摯さや懐の深さに触れ、私も恩返し・恩送りをしていきたい、と強く感じた1週間でした。
 

インハウスクリエイティブ組織を有する企業がカンヌに着目する意義


 現地での気づきとして、事業会社からの参加者が想像以上に多かったこと、また事業会社(ブランド)によるセッションが数多く開催されていたことは嬉しい驚きでした。

 アワードのビジネス貢献に留まらず、カンヌライオンズの場そのものをビジネスに活用する流れまで確立されつつあり、事業会社とクリエイティブチームのエコシステムが出来上がっていることを肌で感じました。

 アワードはIMCの一部……とはさすがに言い過ぎかもしれませんが、アワード=クリエイティブのものという時代ではないことは明らかです。

 カンヌライオンズという場でブランドを多くの人に知っていただくことで、グローバルでのビジネスに貢献する。ビジネスにおけるプレゼンス向上が、カンヌ出品時のサポートになる。そんな好循環が叶うことを、カンヌは私たちに見せてくれました。

 資生堂は研究開発、マーケティング、そしてクリエイティブ等のチームが社内で共創し、同じゴールに向けて歩むことができるのが特長です。インハウスクリエイティブ組織を有する企業こそ、本質的なブランディングという観点でカンヌライオンズに着目する意義を感じました。
 

 また、全体を通して印象的だったのは、AIとともに多く聴いた単語が「human」と「analogue」だったことです。

 AIクラフトカテゴリの新設やAIに関するセッションの多さからも、決してAIを軽んじているわけではないことは明らかですが、別軸の大切な要素として多く語られたのが「人間にしかできないこと」「人間味」「手仕事」「アナログがもたらす体験と感情」といったキーワードです。

 資生堂のクリエイティブをあらわす特長のひとつに「クラフト」があります。クリエイティブチームへ配属されると「資生堂書体」という手書きの書体を一年かけて学び、資生堂の美意識を身につけていきます。世界を誠実なまなざしで見つめ、緻密で細やかな手仕事を重ねていく。私たちの矜持と通じる価値観が数多く語られていたことに勇気づけられ、心に確かな火が灯ったのを感じました。

 世界の潮流が自社の背中を押してくれていることを実感できたカンヌライオンズ。当社のビジョンにもある「一人ひとりの人生を豊かにすること」を目指し、引き続きPRパーソンとして活動してまいります。

 本レポートがどなたかの一助になれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 後編は、ともに現地に渡ったアートディレクターとコピーライターの視点から見たカンヌライオンズを、対談形式でお届けします。
 
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