カンヌライオンズ2026
サイバーエージェント NEW GREENのクリエイターに聞く —— カンヌライオンズ2026で見えた「クリエイティビティの現在地」
2026/09/18
世界最大級のクリエイティビティの祭典「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(カンヌライオンズ)」が、今年も6月22日から26日までフランス・カンヌで開催された。世界中から2万点を超える作品が集まり、その中から優れた広告・コミュニケーション事例が表彰されたほか、多彩なセミナーやトークセッション、業界の第一線で活躍するプロフェッショナル同士の交流が繰り広げられた。
アジェンダノートでは、現地を訪れたマーケターやクリエイターへのインタビューを実施。カンヌでの過ごし方をはじめ、現地で肌で感じたことや得られた学び、日々の仕事にどう生かそうとしているのかを聞いた。
今回は、今年4月にサイバーエージェントがインターネット広告事業内に新設した、社内のトップクリエイターが集結する専門組織「リードクリエイティブセンター NEW GREEN」に所属するクリエイターである飯島夢氏と桑原誠尚氏の二人に話を聞いた(インタビューは、会期4日目に行った)。年々増していくブランドの存在感。クリエイティビティを活かした社会課題との向き合い方。「アイデアの時代」から「アクションの時代」への移行。こうした現地での学び・気づきと、実務への接続、そして2030年に向けた目標について語ってもらった。
アジェンダノートでは、現地を訪れたマーケターやクリエイターへのインタビューを実施。カンヌでの過ごし方をはじめ、現地で肌で感じたことや得られた学び、日々の仕事にどう生かそうとしているのかを聞いた。
今回は、今年4月にサイバーエージェントがインターネット広告事業内に新設した、社内のトップクリエイターが集結する専門組織「リードクリエイティブセンター NEW GREEN」に所属するクリエイターである飯島夢氏と桑原誠尚氏の二人に話を聞いた(インタビューは、会期4日目に行った)。年々増していくブランドの存在感。クリエイティビティを活かした社会課題との向き合い方。「アイデアの時代」から「アクションの時代」への移行。こうした現地での学び・気づきと、実務への接続、そして2030年に向けた目標について語ってもらった。
お題の「眠りどころ」を発見したい

サイバーエージェント
インターネット広告事業本部 リードクリエイティブセンター NEW GREEN
クリエイティブディレクター・プランナー 飯島夢氏(左)
クリエイティブディレクター・コピーライター 桑原誠尚氏(右)
インターネット広告事業本部 リードクリエイティブセンター NEW GREEN
クリエイティブディレクター・プランナー 飯島夢氏(左)
クリエイティブディレクター・コピーライター 桑原誠尚氏(右)
ー どんな目的を持って今年のカンヌライオンズに参加されていますか。
桑原 カンヌライオンズで起こっているさまざまな変化を、自分の目で確かめること。それが最大の目的です。
僕は2019年に一度、カンヌに参加しました。
そこから約7年が経ち、今回は弊社の事前勉強会の準備も担当したこともあって、改めてカンヌについていろいろ調べる機会がありました。その中で感じたのは、以前よりもかなり「ビジネス寄り」のイベントになっているということです。広告主の方々の参加が増えていますし、広告主向けのセッションや登壇も多くなっている。審査員にも広告主側の方が多く選ばれていて、カンヌ自体がより裾野が広く大きなアワードへと発展している印象を受けました。
実務の観点では、世界最高峰のショーケースの中から「良いお題との出会い方」のヒントを見つけたいと考えています。
たとえば昨年の事例だと、メキシコのビールブランド「Tecate」が実施した「The Gulf of Mexico Bar」は、米政権によるメキシコ湾の名称変更の動きに対し、洋上に「メキシコ湾」と名付けたバー(船)を出してGoogleマップにピンを立て、ユーモアで一矢報いた事例です。
このように、カンヌで高く評価される作品には、新興国ならではの社会背景があって初めて成立するものが少なくありません。
Tecate「Gulf of Mexico Bar」。2025年にアウトドア部門ゴールドなどを受賞し、高く評価された。
一方で、「これは日本でも見つけられたお題だったのではないか」と思えるような事例もたくさんあるはずで、それを探したいという気持ちがあります。もちろん、アイデアの面白さを見ることも大事ですが、そもそも日本では実現が難しい事例も多い。だからこそ、日本でも応用できそうなお題やその解決方法を知りたいんです。
たくさんのクリエイターの方が現地に来ているので、事例について「どう見たか」をその場で議論できるのがすごくありがたいですね。そうして理解を深めることも、今回のカンヌ参加の大きな意義だと思っています。
ー 良いお題を見つけたとして、それをそのまま別のケースに適用することは難しいと思いますが、桑原さんがご自分なりに再構築して仕事に落とし込むイメージでしょうか。
桑原 はい。僕が掴みたいのは、お題の「眠りどころ」のようなものです。「先進国でも、こういうところに面白いお題が眠っているんだな」という視点ですね。
たとえば、「なるほど」と思ったもののひとつが、ダイレクト部門でブロンズを受賞していた、配送用段ボールの個人情報ラベルをスクラッチカードに変えた事例です。
段ボールのラベルを剝がさずに捨ててしまう人は日本にもたくさんいますし、捨てられた段ボールから個人情報が漏れるリスクも共通しています。「これは日本でも見つけられたお題だ」と思いました。気づけていなかった自分を顧みて、反省しましたね。
Mercado Livre「SCRATCH YOUR DATA」
もうひとつ印象的だったのは、デジタルOOHのダークモードの事例です。広告の要素を解析し、視認性を損なうことなく消費電力の少ない色に最適化し、大幅な節電を実現するというもの。デジタルOOHは消費電力が非常に多く、環境負荷が高い……これは、普段から渋谷にいる僕たちでも、気づけるはずのお題です。
Plenitude「DARK MODE ADS」。メディア部門でゴールドを受賞。
結局、「渋谷の街頭ビジョンって、こういうものだよね」のような思い込みがあるから、見過ごしてしまうんですよね。「自分たちはどんな思い込みの中にいるのか」「どんな接点にまだ見つけられていないお題が眠っているのか」。そんなことを考えながら、様々な受賞事例を深堀りしています。
クリエイティビティで解決すべきは、社会課題かブランド課題か
飯島 私が前回カンヌに参加したのは2022年です。ちょうどコロナ禍で、渡航自体がかなり大変な時期でしたが、ヤングカンヌ(注1)で日本代表になった年でもあったので、頑張って現地参加しました。
| 注1:ヤングカンヌ=ヤングライオンズコンペティション。30歳以下の若手クリエイターを対象とした公式プログラム。各国の代表2名1チームが参加し、現地で与えられた課題に対し、定められた時間内に制作した映像や企画書、プレゼンテーションにより、ゴールド・シルバー・ブロンズが選出される。飯島氏は、ヤングカンヌ2022のプリント部門で日本代表に選出され、世界本戦に出場した。 |
当時はコロナ禍やウクライナ侵攻の影響もあり、「広告やクリエイティブが社会課題に対して何ができるのか」が盛んに議論されていた印象があります。それから数年、今度は「ユーモアの復権」が語られるなど、少し揺り戻しのような言説に、少しネガティブな印象も感じていました。
そんな中で私が今回確かめたかったのは、戦争や環境問題、ジェンダーギャップといったグローバルな課題に対して、カンヌが今もクリエイティブを通じて向き合う場であり続けているのか、ということです。
実際に参加してみると、ソーシャルイシューを扱うセッションは以前よりも減り、代わりにブランドを主語にしたセッションが目立っているように感じます。
この変化は、ブランドが社会課題に取り組むことが当たり前になった結果とも考えられます。一方で、業界全体がブランドという枠の中へ少し閉じ、大きな社会課題から距離を置く方向に向かっているようにも感じました。
クリエイティビティが力を発揮する場が、ブランドへと引き戻されていることを、どのように評価すべきかはまだ迷っています。ただはっきりと言えるのは、企業がより現実的な行動を重視していることです。理念を語るだけでなく、ブランドがどのように行動できるかが問われている時代だなと改めて感じました。
数年前にヤングカンヌで代表になってから、「クリエイティビティは何のために使うのか」をより深く考えるようになり、その関心は今も変わっていません。。
ユーモアについてもただ面白いだけではなく、意義のあるユーモアとは何か、ユーモアが社会課題を解決するためにどう機能するのか、などその使われ方をしっかりと学んでいるところです。




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