P&G「SKll」は、なぜ市場創造できたのか
商品開発は、まず「満足できていないニーズ (UNMET NEEDS) を探りだす」ことから始まると言われます。しかし、ニーズがそこそこのレベルまで満たされている市場では、まだ満たされていないニーズを探り当てようとするよりも、ユーザーは全く必要としていない(つまり、そこにニーズはない)ところに、「ウオンツ(WANTS)」を創りだせれば、市場創造・拡大への切り口になると思います。
私が使っている「NEEDS」と「WANTS」という言葉の違いは、「今、必要かどうか」です。今、必要なモノやコトは、既に多くのユーザーが利用しています。なぜならばそれらは「必要」なのですから。それら必要なモノやコトを利用している中で出てくる「もう少し●●だったらいいのに」とか「こういう機能があればいい」という感想や欲求が 「UNMET NEEDS」です。
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P&G時代に私が担当した高級スキンケア化粧品の「SKll」はWANTSをつくり出し、「今でしょ!」で市場拡大に貢献した商品のひとつと言えると思います。
「SKll」は、数年前まで「肌を回復し、維持してくれる」スキンケアとして40~50代以上の女性に絶大なる人気を誇っていましたが、若年層ユーザーの獲得に苦戦していました。
若年層の女性の肌は、高額スキンケアを使わなくてもすでに美しく、高額な費用をかけてまで何とかしたいと思う、「UNMETE NEEDS」は存在しなかったのです。
「SKllは、いいと思うけどまだ早い」「40代になったら考えます」という若い女性に今、「SKll」を使っていただくためのWANTSをつくり出したのが、「Change the Destiny 運命を変えよう」というキャンペーンです。
このキャンペーンは「今、SKllを使い始めることで、未来の肌の調子が違ってくる」というコンセプトで、「(今はきれいでも)年をとったら、肌は衰えていくのが当然である」とあきらめていた若い人たちに「あきらめたくない、年をとってもきれいでいたい。今すぐSKllを使い始めたい!」と思っていただくWANTSをつくり出しました。
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みなさまも、現在担当している商品の市場がどのような段階にあるのか分析し、その上で「UNMETE NEEDS」や「WANTS」を探ってみてはいかがでしょうか。